「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんによると、年間数件ではあるが、こうした習い事に関する相談が寄せられるという。保育時間内に水泳教室にバスで送迎される例では、安全性への不安や、幼児教育無償化に乗じたビジネスではないかという疑問が寄せられた。
選択制であっても、追加料金を払い、習い事を選択するかどうかは、家庭の事情や保護者の考え方によるので、子ども自身の選択ではない点も問題視する。
「習い事の時間にわが子がお友だちと分けられることを心配して、習い事は不要と思っていても参加せざるを得ないという声も聞きます。幼児期は人格形成期であり、子ども同士が関わり合って社会性を育む時期なので、孤立感や差別感を覚えさせる環境をつくってしまうのだとしたら、罪深いことだと思います」(普光院さん)
社会が豊かになるにつれ、“習い事ビジネス”はますます隆盛になっているが、普光院さんは、そこに親が乗せられてしまっているのではないかとも感じている。園での運動指導と運動能力の関係を調べた研究では、外部講師に任せるよりも、いつも遊んでいる保育者が指導する園のほうが結果がよかったり、一斉の指導を行うよりも、子どもがそれぞれ自由に動き回って遊ぶことを重視する保育のほうが高い結果が出たりしているという。普光院さんは言う。
「保育園側は、『習い事』として有料で切り分けるのではなく、保育の質そのものを高めていくことに力を注ぐべきだと思います。一方で、保護者もまた『幼児期から習い事をしないと、乗り遅れる』と考えるのではなく、“子どもの気持ち”で本当に楽しめるものとは何か、を考える。そうした意識の改革も必要だと思います」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2022年3月14日号