週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「人工透析」 の解説を紹介する。
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透析とは機能が低下した腎臓を人工的に置き換える治療のことだ。血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の2つの方法がある。HDは血液をからだの外に出し、人工腎臓(透析器=ダイヤライザ)を通じてからだの毒素や余分な水分を取り除いた後に再び体内に戻す。PDは、おなか(腹膜)の中に透析液を入れて体内の毒素などを染み出させ、数時間ごとに交換する方法だ。
日本透析医学会の調査によれば2019年の透析患者数は全国で34万4640人、毎年、少しずつ増加している。透析医療の進歩で長生きができる人が増えており、透析導入者も高齢者が多いという背景がある。
透析導入の主原因となるのは慢性腎臓病だ。腎機能が慢性的に低下していく病気の総称で、国民の8人に1人が罹患している。糖尿病の合併症である糖尿病性腎症(39.1%)、免疫反応の異常などで起こる慢性糸球体腎炎(25.7%)、高血圧によって起こる腎硬化症(11.4%)が三大要因だ。
腎臓は体内の水分やナトリウム、カリウムなどのミネラルの量を調節して体液の量や濃度を一定に保ったり、老廃物をからだの外に排泄したりする働きをしている。このため、慢性腎臓病が進むと腎機能が低下し、からだに毒素がたまり、食欲不振や悪心、倦怠感、さらに尿毒症によって心不全など命に関わる合併症が起こりやすくなる。
検査数値であるeGFR(推算糸球体濾過量、腎臓が血液をどれだけ濾過できるかを示す値)が30未満になると、腎臓の代わりとなる「腎代替療法」を考える時期とされている。