書籍『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』が好評発売中!※Amazonで本の詳細を見る
書籍『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』が好評発売中!
※Amazonで本の詳細を見る

 アリス演じる一華と二人の食卓のシーンから撮影はスタート。

 テンションの高いセリフのやりとりの合間にちょこちょこ言葉を足して、そのたびにちょっとしゃくれながら喋るアリス。

 それによって会話のテンションがさらに上がってシーンが跳ねていく。

 繰り返しても毎回同じところでちゃんとしゃくれるので、「おもしろいけど事務所的にだいじょうぶ?」とカットがかかってからツッコんだ。

 現場は笑いに包まれ、アリスも一緒に笑っていた。

 それから撮影は進み、10分くらい経ったころだろうか。

「あの……水野さん」

 とアリスが深刻そうな顔をして問いかけてきた。

「わたし……どこでしゃくれてました……?」
「……」

 自覚ねえのかい!!

 昔っからしょっちゅう変顔の写真を送ってくる子だったけど、変顔やりすぎでもう、しゃくれてる感覚すら分からなくなっちゃってるじゃない!

 そういうとこだと思うぞ、事務所が心配してるの。

 私はそういう全力なところが好きだけど。

「昨日の滝藤さんとのシーンの撮影で酸欠になって、終わってからずっと吐き気が止まらなかったんですよ」

 とアリス。ほんとうにいつだって全力なのだ、この子は。

「どこのシーン撮ってたの?」と問う。

「カツ丼持って逃げるシーンだったんですけど」

 ……ワードが強い!

 なんでカツ丼持って逃げてるんだ。どんなシーンだ。

 酸欠になった、ってどんだけ逃げたんだ、カツ丼持って!

 けんちゃんも全力だ。

 息が上がるほどのテンションでカットを重ねて毎日へとへと。

 3時になると「おやつの時間だ、おやつの時間だ」と騒ぎ出す。

 私は撮影1日で声がガラガラになった。

 コメディーはほんとうに体力を消耗する。

 だけどこのドラマでしか使わない演技の引き出しを全開にして、みんなで楽しんでいる。ここから3カ月。全10話。全力で駆け抜ける。

 そんな中、我が子は間もなく終業式。来月には一つ進級して年中になる。また新たな1年が始まる。

 そして……。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
突然ですが、こちらの連載、これが最終回となります