まずは届いた日に一度着てみると、思っていた以上に袴が足にまとわりつき、うまくバランスが取れません。それでも、家の中でしばらく歩いているうちに、少しずつ感覚をつかんで動けるようになったため、卒業式間近まで箱に入れて保管することにしました。
■歩く練習をしてみた
そして翌年。前年には全く想像もしていなかった新型コロナウイルスの影響で、卒業式の数週間前に一斉休校となり、次に友人たちと会えるのは卒業式当日という事態になりました。ある日突然、学校に通えなくなり、未知のウイルスを恐れて外出もできなくなった子どもたちのストレスはとても大きかったと思います。息子は何度も学校に行きたいと言っていました。
卒業式は、保護者は参加せずに外で待機となり、場所も大きなホールから小学校の体育館に変更し、短時間で行うことが決まりました。
出席できるからには、やはり袴を着たいという息子と、再び歩く練習をしてみることにしました。変更になった小学校の体育館は地下にあり、6年生の教室は3階です。
階段は平坦な道より動きにくく、手すりを使いながら、自宅の1階と2階を何度も往復しました。学校にはエレベーターがあり、もちろん使用させて頂けるのですが、息子がかたくなに「階段で大丈夫」と言い続けたため、あとは本人に任せることにしました。
■本人の好きなようにさせてみる
いよいよ当日。自分のものなので、裾を汚しても問題ないというのは気が楽でした。足元は足袋の替わりに指先が割れている靴下を履き、私のビーチサンダルを合わせると、それらしく見えました。結果的に先生やお友達と外でたくさん写真を撮ったので、これでよかったと思います。
心配性な私は、先を見越して不安になることもあるのですが、やはり子どもがある程度の年齢になったら、本人の好きなようにさせてみるのがよいように思います。
ビーチサンダルは動くたびに脱げてしまい、最後は開き直って靴下で歩いていましたが(笑)、これもまた良い思い出です。
この記事が配信される翌日は、医療的ケア児の中学3年生の長女が通う特別支援学校の卒業式です。現在、授業では卒業式に向け、名前を呼ばれて手を挙げる練習をしているようです。当日どんな返事を見せてくれるのか、今からとても楽しみです。
みんなみんな、楽しい春が来ますように。
※AERAオンライン限定記事