市和歌山の米田天翼
市和歌山の米田天翼

 3月19日に開幕したセンバツ高校野球も全出場校が登場し、大会も中盤戦に入ってきた。プロのスカウト陣は全チームを一通り視察したら甲子園を去るのが恒例となっているが、今大会で目立った今年のドラフト候補についてピックアップして紹介したいと思う。

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 まず投手で大きな存在感を示したのが山田陽翔(近江)と米田天翼(市和歌山)の2人だ。近江は大会前日に京都国際が多くの部員の新型コロナウイルス感染によって、急遽補欠校から繰り上がっての出場となり、また山田は昨年秋に肘の故障で公式戦の登板がなかったこともあって調整が心配されていたが、1回戦では延長13回、2回戦でも9回を1人で投げ抜き、その実力を証明した。ストレートの最速は1回戦に登板した投手の中で最速となる146キロをマーク。高い位置から縦に腕が振れるため、上背以上の角度が感じられるのが大きな長所だ。フォーク、ツーシームの縦の変化球もストレートと同じ軌道から鋭く変化し、空振りを奪うことができる。昨年の夏に続いて、大舞台で力を発揮できるというのもプロ向きと言えるだろう。

 一方の米田は2年生ながら高校通算56本塁打を誇る佐々木麟太郎を擁する花巻東の強力打線を力勝負でねじ伏せて見せた。特に見事だったのが内角と高めを有効に使った攻めだ。最速145キロをマークしたストレートは数字以上に打者の手元で勢いが感じられ、佐々木をはじめとした花巻東の打者のバットは度々空を切った。カットボール、ツーシームを上手く散らす投球は先輩の小園健太(DeNA1位)とも重なる部分であり、終盤でもスピード、制球が落ちないスタミナも魅力だ。

 投手でもう1人秋からの大きな成長を見せたのが川原嗣貴(大阪桐蔭)だ。昨年秋までは188cmの長身を生かしきれていなかったが、この選抜では軸足にしっかりと体重を乗せてからステップできるようになり、スピードもコントロールも格段にレベルアップした印象を受ける。腕を振って投げられるカットボールは打者の手元で鋭く変化し、大きなカーブで緩急をつけられるのも武器だ。大会前は2年生サウスポーの前田悠伍に注目が集まっていたが、1回戦のピッチングで一気に注目度が高まったことは間違いない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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野手で“目立った”選手は?