同じく前代未聞ながら、低レベルだったのが、ニューカッスルのキーロン・ダイアーとリー・ボウヤーの「味方同士の殴り合い」だ。2005年4月3日のアストン・ヴィラ戦。試合中、「パスを回さない」ことを発端に言い争いを始めた両者は、観衆5万人が見つめるピッチ上のど真ん中で掴み合い、クロスカウンターを浴びせ合う大喧嘩を繰り広げ、2人揃って退場となった。この一件で、ダイアーが3試合、ボウヤーが4試合の出場停止処分に科され、ボウヤーにはチームから罰金処分も科された。のちに両者は和解したとされるが、一気に2人が減った中で試合を戦わなくてはならなくなった味方選手たちが怒り心頭だったことは言うまでもない。
その他、ジネディーヌ・ジダンの「頭突き」やルイス・スアレスの「噛み付き」などが有名な退場劇だが、彼らのようにW杯の大舞台とは異なる場所、アルゼンチンの下部リーグで「試合中に犬を投げて」退場となった選手がいる。2013年6月、試合中のピッチに一匹の犬が迷い込むと、ベジャ・ビスタ所属のホセ・ヒメネスが両手で犬の首をつかむと、そのまま乱暴に、勢いをつけて客席へ放り投げた。しかし、飛距離が足りず、犬はフェンスに激突。このシーンに、観客から罵声と発煙筒が飛び、試合は大混乱。犬は何事もなかったように走り去ったが、ホセ・ヒメネスはレッドカードで退場処分。その後、チームは事態の収拾を図るために同選手を解雇した。
日本では、2020年10月4日の関東1部リーグ・東京23FCの木島徹也の暴力行為が大きな問題となった。同選手はブリオベッカ浦安戦のキックオフ直後、ハーフウェーラインを挟んで対峙していた相手選手に一直線に突進し、顔面へ肘打ち。その試合で退場にはならなかったが、この「キックオフ・エルボー」のシーンが動画で拡散されて“炎上”して事態は急展開。元々、ラフプレーが目立っていた木島は「キックオフ前の相手選手同士の極めて当然の戦術的な会話に過剰に反応し、肘が出てしまう結果となった」と説明したが、試合から5日後に契約解除となった。