聖マリアンナ医科大学病院腎臓・高血圧内科 病院教授の櫻田勉医師

 慢性腎臓病の重症度はG1からG5の六つのステージからなっており、これにあてはめると、ステージG3bは中等症ということになります。実際に透析に入るのはステージG5(eGFRが15未満)ですから、患者さんの多くは自分が将来、透析をしなければならないかもしれない、というイメージはなかなか持てません。だからこそ、この段階で教育入院をしていただくことのメリットは大きいのです。

 このほか、「腎機能の低下速度が速い患者さん」「主治医が教育入院を必要とした患者さん」です。また、これより軽い人でも、「ぜひ受けたい」という希望があれば受け入れています。

入院期間は1週間です。主なものをまとめると、次のようになります。

(1)各種検査で病気の悪化因子を探る

 通常の外来でチェックできない全身の検査、具体的には心臓の超音波や動脈硬化の検査などを実施します。慢性腎臓病が進行する要因は患者さんごとに違うため、からだの状態を詳しく調べることで、何に気をつけていったらいいかが明らかになります。

(2)医師による講義

 検査結果などをふまえ、患者さんに慢性腎臓病を理解してもらうために医師が講義をします。eGFRが年単位でどう変化(低下)しているかをグラフ化し、見ていただきます。「このまま落ちていくと、〇年後に透析になる可能性があります」といったように、今後の見込みを示し、この期間をできるだけ延ばすことが教育入院の大きな目的であることを理解してもらいます。

(3)管理栄養士による食事指導

 食事療法(腎臓病食)は病気の進行を左右する大事な要素です。特に塩分制限が重要で、管理栄養士が日々の食事でどのくらい減塩ができているかをチェックします。一方で、食べる量を減らし過ぎないことも、高齢者には大切です。

 また、病院では1日3食、腎臓病食が出されます。これを食べること、つまり経験することが実はとても役立ちます。腎臓病食の中でも患者さんが特に驚くのは、塩分が1日3~6グラム以下(病気の進行度により、異なる)に抑えられた、その味です。入院初日は「味がない」「おいしくない」と言われます。「こんなにいつもの食事と違うのだ」と驚かれることも。それは普段の食事で減塩が十分にできていない証拠でもあります。それに気づくことが退院後の食生活に役立つのです。

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