腎臓の機能が何らかの原因で低下していく慢性腎臓病(CKD)。放置したままにしておくと末期腎不全となり、人工透析や腎移植を受けなければ生きられなくなってしまいます。そうした中、注目されているのが「慢性腎臓病教育入院」です(以下、教育入院)。近年の研究では教育入院をした患者は病気の進行速度がゆるやかになり、教育入院をしなかった患者と比べ透析導入までの期間が延びること、透析になっても、長生きできることが報告されています。教育入院の仕組みやその効果について、聖マリアンナ医科大学病院腎臓・高血圧内科 病院教授の櫻田勉医師に解説してもらいました。
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慢性腎臓病の主な発症原因は糖尿病や高血圧症などといった生活習慣病です。
腎臓は毛細血管の集まりなので、こうした病気があると血管が障害され、徐々に老廃物の排泄機能を果たせなくなってきます。このため、最終的に人工透析や腎移植が必要になってくるわけです。
そうならないために外来では腎臓を守るための薬物治療や食事指導などをおこないますが、うまくいかないこともあります。慢性腎臓病は末期になるまで症状があらわれないこともあり、そのために治療を中断してしまったり、食生活の乱れなどにより、病気が進行し、ある日、
「このままだと、人工透析になります」
と言われ、ショックを受けるケースが残念ながらまだまだ多いのです。
私たちはこうした患者さんを少しでも減らすため、約11年前から慢性腎臓病患者さんに対する教育入院を始めました。この分野の先駆者である八田内科医院(京都)の院長である八田告医師からその効果を聞いたことがきっかけです。2020年までに500人以上の患者さんに教育入院を経験していただきましたが、患者さんにとって大きなメリットがあると確信しています。
では、教育入院はどのようなものか、当院のケースを紹介していきましょう。
まず、対象となる患者さんですが、「残されている腎臓の機能をあらわす値」であるeGFR(推算糸球体濾過量)が45未満、ステージG3b以降の患者さんです。