――ロシア軍の戦車が攻撃される映像がたくさん出回っていますが、それをどう見ますか?
戦車部隊が進撃する際、ロシア側も当然、ドローンを上げたり、歩兵の偵察部隊を出して周囲に敵がいないか確認したりしてから進みます。ところが、ウクライナ軍はそれをかいくぐってドローンを飛ばし、ロシア軍の動きを把握している。なので、ロシア兵からすれば、まさか、こんなところから、と思うようなところから攻撃を受けている。道路上で戦車の車列が丸ごと焼け焦げた映像を見ましたが、あのロシア軍がなすすべもなく、ここまでやられてしまうというのは衝撃的で、ドローンによって正確に場所が把握されてしまうと、こうなってしまうのだな、と思いました。
――ドローンが飛んでいると、ブーンという独特の音がして、すぐに相手に気づかれてしまいそうですが。
これまで私は自衛隊や米軍の演習でドローンを使用する様子を間近で見てきましたが、偵察される側からすると、その音でドローンが飛んできたことはすぐに分かります。ところが、戦車1個中隊が退避しようとしても時間がかかる。その間に対戦車ミサイルを撃ち込まれてしまう。ですから、ウクライナ軍がロシアの戦車部隊の周辺でドローンを飛ばせる環境を確保した時点で、勝敗はすでに決まっていた、という感じでしょう。戦車部隊を挟み撃ちにして攻撃するような動画も上空から撮影しているくらいですから、ドローンと対戦車ミサイルを組み合わせて相当システマチックに攻撃を繰り返していると思われます。
――ドローンが飛んできたことがすぐに分かるのであれば、簡単に撃ち落とされてしまうのではないでしょうか?
確かにあの独特な音で「あっ、ドローンが来た」と分かります。ところが姿は見えない。飛行するドローンを見つけるのは至難の業です。ロシア軍もこれだけひどい目にあっているので、何とか探し出して、そのたび、小銃や対空機関砲で撃ち落とそうとしているでしょう。けれど、それくらいの対応しかできていない。ドローンのコントロール電波や画像情報の送信を妨害する「ジャミング」と呼ばれる対策をロシア軍はとっていないようです。
――自衛隊でもドローンを活用しているそうですが。
自衛隊が本格的に偵察用ドローンを配備するようになったのは5、6年前からで、いまではごくふつうに運用しているのを演習で目にします。すべて、いまウクライナ軍が活用しているような偵察型ドローンです。例えば、フランス製の「アナフィー」は手のひらサイズで、実際、手のひらの上から飛ばします。カナダ製の「スカイレンジャー」はそれよりも大型のドローンで幅は1メートル弱です。さらに大型で高空を飛行する「スキャンイーグル」「グローバルホーク」もあります(共にアメリカ製)。