ロシアによるウクライナ侵攻開始から1カ月以上が過ぎた。南東部の主要都市マリウポリでは激しい攻撃によって市民の犠牲者が増え続けている。一方、欧米諸国から対戦車ミサイルなど、大量の兵器がウクライナに供与され、ロシア軍は苦戦を強いられているともいわれている。長年、自衛隊や米軍を取材してきたフォトジャーナリストの菊池雅之さんは、ウクライナ軍がロシア軍の戦闘車両を次々と撃破する背景に「家庭用ドローンを巧みに使う戦術がある」と指摘する。菊池さんに話を聞いた。
【写真】プーチン氏の顔写真とともに「間抜けなプーチン」の文字が書かれた火炎瓶
* * *
――いま、インターネット上にはロシア軍の戦車が破壊される様子を映した動画があふれています。なぜ、強大なロシア軍を相手にウクライナ軍が善戦できているのでしょうか?
ロシア軍が侵攻を開始する以前からアメリカを中心とした欧米諸国は「ジャベリン」など、強力な対戦車ミサイルを大量にウクライナに供与してきました。それらを使用してロシア軍の戦車を撃破しているわけですが、そもそも戦車の正確な位置が分からなければ、対戦車ミサイルを発射することはできません。そこでウクライナ軍が活用しているのがドローンです。
――ドローンというと、家電量販店などで見る回転翼がついた一般の人が楽しむドローンが思い浮かびます。
まさに、そのドローンです。ときどき、ウクライナ軍が運用するトルコ製の攻撃型ドローン「バイラクタルTB2」について書かれた記事を目にしますが、保有数はそれほど多くはありません。ウクライナで使われているドローンの多くは敵を発見するための偵察型ドローンで、その映像を見ると、ふつうの市販品であることがわかります。義勇兵が持ち込んだものもあるようです。インターネット上にロシア軍の戦車が破壊される様子を上空から撮影した動画がアップされていますが、その多くはこうしたドローンで撮影されたものでしょう。
――しかし、ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もドローンを活用しているのではないでしょうか?
そのとおりです。ロシア軍も各種のドローンを使用していると思われます。ただ、ロシアはそれについての情報を公表していないので、どのように使われているか、よく分かりません。ウクライナ軍がロシア軍よりも巧みにドローンを運用しているのは、ほぼ確実です。でなければ、1カ月もたたないうちに戦車を数百両も撃破することはできないでしょう。