自分がどうしたいか理解し、それを相手に伝える「決める力」。人生において重要な力を健全に育むには、言葉がけから留意すべきことがあるという。「話し方」を特集したAERA 2022年4月11日号から。
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日本メンタルアップ支援機構代表理事で公認心理師の大野萌子さんは、「親子といえども違う人間。その当たり前を忘れてしまう親が多い」と語る。
「親のために」ではなく、子ども自身が「自分のために」やるべきことを増やしていく。それが、「決める力」を育てることにつながるという。
大野さんによると、子育てでも避けるべきNGワードがあるという。その言い換えを教えてもらった。
「ちゃんとしなさい」と「いつになったらできるの?」は、つい使ってしまうフレーズだが、NG。何を指すのかを伝えなければ、子どもは責められているように感じてしまう。前者は「挨拶ぐらいしなさい」ではまだ言葉が足らず、「朝起きたらおはようって挨拶しようね」と具体的に言い換えるべきだという。
「後者は『どうしたら実現可能なのか?』というところへ持っていきたいので、『どういうところが難しい?』のように、行動に結びつく言葉にしてください」
「何度も言わせないでよ」は、「伝わらない原因はあなたにある」というメッセージになっている。「大切なことだからもう一度言うね」などに言い換えよう。
「もうお兄ちゃんなんだから」のように役割を押し付けるのも避ける。「さすがお兄ちゃんだね」も褒めているようで、役割を背負わせているのでNG。
「企業内でカウンセリングをしていると、大人になっても兄や姉の役割に縛られているケースがよくあります。子どものころ触れた言葉の影響はそれほど長く続きます。子どもを縛らず、本人に焦点をあててください」
頭ごなしに責めるのも避けよう。例えば、家庭学習で「毎日、算数と国語のプリントを1枚ずつやる」と決めたのにできない。もしかすると原因は「算数は5分で終わっても、国語は30分かかるから」かもしれない。