千葉県にある渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(通称、渋幕)は、全国屈指の進学校ですが、学びのスタートは「ゆっくり」「手厚く」が基本。手間のかかる理科実験も時間を惜しまず行われ、授業の7割をあてる時期もあるとか。なぜ、そのような方針なのでしょうか。 教育ライター・佐藤智さんの著書『渋幕だけが知っている「勉強しなさい!」と言わなくても自分から学ぶ子どもになる3つの秘密』(佐藤智著、飛鳥新社)から、“渋幕流の授業”を紹介します。

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理科の「実験」は成功するより失敗する方が財産になる

 渋幕の学びの特徴として、「実験の多さ」を挙げる生徒は少なくありません。実は先生の準備が大変だったり多様な器具が必要だったりするため、頻繁に実施できる学校が減っています。特にコロナ禍では体験的な学びが制限されたため、実数が大幅に減少していることが報道されました。

 こうした一般的な状況に対し、渋幕ではたくさんの実験が行われ続けています。

 渋幕の実験設備に目を向けると、中学生用に実験室が2教室、高校生用に実験が6教室あります。

 公立高校に15年勤務した後、渋幕へ移った化学の岩田久道先生は「実験の数は圧倒的だ」と語ります。

週の半分以上は実験をしています。多い時期は、授業の7割が実験になる。そして、高校3年生の最後の瞬間まで実験をし続けます。

 高度な実験は、試薬や機器などが用意されていないとできません。当時の学校長の田村哲夫先生が『生徒に関連するものであればきちんと揃えなさい』という意志を持っていたので、どこの公立や私立にも負けない数の実験ができる学校になりました」

 卒業生のアンケートにも、「高校3年生のときに、自由選択で選んだ物理実験は、4人しか履修者がおらず、こぢんまりしていた分、のびのびとできた。物理現象を実験で検証できて感動した記憶があります。今思うと、たった4人のために先生はすごく手間をかけてくれていたと思いますが、そのような授業を選択肢として用意してくださったことはとてもありがたかったです」という声がありました。

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