作家・画家の大宮エリーさんの新連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんだろうと考えます。ゲストは解剖学者の養老孟司さんです。

【写真】養老孟司さんと自宅のデッキでくつろぐ愛猫「まる」

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大宮:私、東大ですごく印象に残っている授業があって。北海道・富良野の演習林や野山で散策するというのがあったんですよ。野生の植物を見たり昆虫を見たりする……。

養老:行きました?

大宮:行きました! すごく楽しくて。でも、自力で(現地に)来いって書いてあったんです。みんなオロオロしながらとりあえず富良野駅に行って、夜はビニールハウスで夕張メロンを食べさせてもらって。授業というか、自然の中で対話というか。いろんな専門家、現地の方に、菌類など教えていただきました。

養老:文章も書かなかったでしょ?

大宮:レポートも書きませんでした。来たら単位やるって。

養老:正しいと思いますね。僕は解剖の実習をしていましたけど、自分でやらなきゃしょうがない。講義なんか年に1回しかやりませんでした。

大宮:え? 学生はどうしてたんですか?

養老:あとは解剖実習ですよ。1時から4時までなんだけど、下手くそなやつは夜の10時までかかるんですよ。手際よく物事を進めるということをある程度覚えてほしい。

大宮:富良野的ですね、野に投げ込まれてる。そうだ、いろいろな大学にお邪魔しましたが、東大って実はとても自然豊かですよね。池とかもあるし。先生は行ったことありますか。

養老:あります。学生時代には三四郎池のほとりで、ミミズを捕って、ネズミのえさにしていました。

大宮:ネズミにえさをやっていたんですか!?

養老:トガリネズミを飼っていたんです。かわいいですよ。モグラの親戚です。北海道で捕まえてかごに入れて夜行列車で連れてきました。そいつが生きたエサしか食べないので。

大宮:先生、めちゃくちゃなことをしてますね。

養老:そういうことをするには、およそ向かない学校でしたね。ミミズを部屋に持ち帰ってネズミにあげると、食べるんです。でも、1週間食べさせていたら、もう食べなくなりました。動物だってわかるんですよ。食べ物が偏るって。

大宮:次のえさは? ダンゴムシとか何か?

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