そこで今回、がんや、糖尿病など生活習慣病の予防や治療に取り組む医師たちに、医者いらずな食べ物や生活習慣を教えてもらった。
まずは食べ物から見ていこう。若林医院の若林利光院長(脳神経外科医)は、トマトを挙げる。
「緑黄色野菜は細胞のダメージを和らげ、動脈硬化や老化を防ぐ効果が期待されるポリフェノールを多く含みます。とくにトマトは抗酸化作用が高いとされるリコピンも豊富。『トマトが赤くなると医者が青くなる』『トマトのなる家に病なし』といった言葉があるように、健康状態の改善に高い効果が期待できる野菜の代表例です」
カボチャも、トマトに引けを取らない医者いらずだという。
「『冬至にカボチャを食べると中風にならない』と言われます。中風とは、脳卒中のこと。実際に、カボチャには脳卒中のリスクを高める動脈硬化の予防に効果的なβ(ベータ)カロテンやビタミンC、ビタミンEが多く含まれています。糖質の吸収を抑える食物繊維も多い」
若林院長が三つ目に挙げるのはビタミンB1だ。
「脳や心臓の細胞を活性化する働きがあり、認知症や心不全の予防効果が期待されています。脳や心臓にエネルギー源であるブドウ糖が十分にあっても、ビタミンB1が不足すればうまく活用できない。ビタミンB1を多く含む食べ物は、豚肉やウナギ、玄米など。錠剤でも構いません。私も毎日飲んでいます」
ビタミンB1は、実は歴史上の有名な人物の生死とも関わりが深い。例えば、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公で、1224年に62歳で亡くなった北条義時の死因は、ビタミンB1不足が原因の脚気だった可能性があるという。
「諸説ありますが、歴史書『吾妻鏡』には、精神障害を伴う脚気に、強い腹痛や嘔吐を伴う『霍乱(かくらん)』が重なったとある。脚気が原因の精神障害なら、ウェルニッケ脳症が考えられます。脚気がそれほど重症化していたとすれば、耐え難い胸の痛みに襲われる『衝心脚気』で亡くなったことの説明もつく。義時の場合、白米の偏食か、アルコール依存症によって、ビタミンB1不足に陥っていた可能性があります」(若林院長)