コロナ禍で生活様式が乱され、健康に不安を感じる人も少なくないだろう。そんな時、魅力的に響くのは「医者いらず」という言葉。医者を遠ざける食事や生活習慣とはどんなものか、その道のプロである医師たちも実践する極意を聞いた。
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日本人の寿命は延びている。厚生労働省によると、2020年の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で、女性は8年、男性は9年連続で過去最高を更新した。
ただし、介護などの必要がなく、自立して日常生活が送れる「健康寿命」(19年)は女性が75.38歳、男性が72.68歳。平均寿命との間に女性は約12年、男性は約9年の開きがある。病気の治療や介護はお金がかかり、周りの人の世話も必要だ。どうせなら、元気なまま長生きしたい。
『40歳からの予防医学』(ダイヤモンド社)の著者で、YouTubeで予防医学に関する情報を発信している産業医・内科医の森勇磨さんは、病気になる前にできることの大切さを訴える。
「病院へのアクセスのよさや国民皆保険制度など、日本の医療制度は世界トップクラスです。しかし、これらは主に病気になってから利用するもの。病気になる前の、予防医学のアプローチは十分とは言えません。健康や医療に関する情報はメディアにあふれていますが、それらを吟味し、正しいものを取捨選択する能力を示す『ヘルスリテラシー』は、実は世界的にみて極めて低いとされています」
元気でいるための知識や行動で参考になるのが、日本や海外に古くから伝わる「医者いらず」。食べ物や生活習慣により、医者に行く必要がないほど健康でいられると考えられるものを指す。伝統的には、柿や大根、梅干しなどが挙げられることが多く、「腹八分目の医者いらず」「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」といった言葉もある。
しかし、中には根拠がはっきりしないものもある。食べすぎややりすぎが、かえって害をおよぼす場合だってあるだろう。