50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、2019年の小脳梗塞に続き、今度はうっ血性心不全の大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。人生の節目の70歳を超えたいま、天龍さんが伝えたいことは? 今回は「喜び・楽しみ」をテーマに、つれづれに明るく飄々と語ってもらいました。
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俺自身の今の喜びは、月に1~2回行っている天龍プロジェクトの大会だ。再スタートをしてからもう1年になるが、出場している選手たちは最初、いかにもよその団体の寄せ集めという雰囲気だったが、彼らも団体になじみだしてきて、今となっては天プロらしい試合をやってくれるのが嬉しいよ。リングに上がっているのはインディーのあんちゃんかもしれないけど、気持ちに張りが出てきたっていう感じが見受けられて嬉しい。彼らも気持ちがまた様変わりして、新シリーズの一年が始まるかと思うと嬉しいね。
ただ、慣れてくると手を抜きたがるからなぁ……。本人たちも手を抜いているつもりはなくても、最初の緊張感や前向きな真摯な気持ちが無くなってくるんだよね。それにね、例えば「一週間後に大きな試合があるから、そこに向けて力をセーブしておきたい」と考える選手もいるんだが、これは大きな間違いだ。普段から全力で大きなことをやっていないと、一週間後の試合で大きな力を出すことはできない。普段からやっていないことを、大舞台でできるわけがない。火事場の馬鹿力だって、普段から全力でやっているから、それ以上のものが出るんだ。
天龍プロジェクトに出場している選手で成長著しいのは矢野啓太だね。最初は何の関わりもない奴だったが、毎回観ているうちに、段々小癪(こしゃく)な技を使い出したりして、「こんなことできるんだ」って俺が気になり出してね。矢野も「こんなことをやったら天龍はどう反応するか」と探りながら試合をしているようだね。それで俺が「いいドロップキックだ」なんて言うと、ほかの奴らまでみんなドロップキックをやり始めるんだ(笑)。そうじゃないだろう!