切り抜き動画を制作する人々に収益の一部を渡すことで、切り抜き動画を大量に製作してもらうという拡散方法があります。オリジナルのコンテンツの内容を歪曲されて拡散されるリスクもありますが、商品や人物やコンテンツの存在の拡散の手法として、非常に有効な手段の一つです。また、YouTube動画の中で、人気が高いジャンルに「ショート」という最大60秒の短い動画です。ショートは、インスタグラムのリールと類似した機能で、TikTokのような短い尺の動画の人気を反映したものです。現代では、長い動画よりも短い動画の方が好まれるケースも多く、様々な意味で手軽に情報を得られる「切り抜き」「ショート」の存在感は、今後も増していくと予想します。

 SNS時代で恐ろしいのは、前述した千羽鶴論争のような断片的な情報の拡散による炎上もしくは誹謗中傷です。そもそも、Twitterは一つの投稿で140文字しか発信することができないプラットフォームです。端的に、短い言葉で発信する必要があり、前提条件や情報は省かれてしまう場合も多々あります。千羽鶴論争も、重要な前提条件そっちのけで、「戦禍にある方々に大量の鶴を送るのは迷惑だ」「現実的なお金による支援をすべきだ」という部分のみが拡散されたように思います。

 Twitterでは、少し前に品川駅の出勤する方々が歩くコンコースに「今日の仕事は、楽しみですか」というキャッチフレーズの広告を出した企業が炎上しました。仕事が楽しくない人々や鬱や過労に苦しむ人々への配慮が足りないなどの批判が殺到しました。しかし、実際には、この広告は15秒ほどの動画であり、このキャッチフレーズが現れるのは、1~2秒程度であったことが判明しました。「断片的な情報のひとり歩き」により、本来の趣旨とは全く違う形で拡散されてしまった事例は枚挙にいとまがありません。「切り抜き」「ショート」は非常に便利で、端的に素早く情報を得ることが可能ですが、批判や抗議などの行動を起こす前に、必ず前提条件となる情報を調べるべきです。

 インフルエンサーは、端的に情報を発信します。その方がわかりやすく、インパクトがあり、拡散されやすいからです。そのまま「切り取られた情報」を鵜呑みにするのではなく、何か行動を起こす前に、前提となる背景や状況について正しく情報収集するのが、現代的なリテラシーだと考えます。

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