Jリーグが掲げた重要な基本理念である「地域密着」は、発足から30年が経過した中で着実に根付いてきた。その中の事象の一つに、保有が義務化されている下部組織の存在がある。2019年からは「ホームグロウン制度」が導入され、これまで以上に「育成力」が問われる中、各クラブはこれまでどのような選手を輩出してきたのか。J1在籍10年以上の24クラブを対象に“ユース最高傑作”を選出し、全3回に分けて発表したい。今回は後編。
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■京都:久保裕也
1993年12月24日、山口県生まれ。アジリティに優れ、左右両足から強烈かつ正確なシュートを放つアタッカー。「サンガユース黄金時代」のエースとして名を馳せ、高校3年時の2011年にJ2でチーム最多の10得点をマーク。U-16時代から世代別代表でも存在感を示し、フル代表には2012年に高校生(市川大祐以来、日本代表史上2人目)で招集された。その後、2013年夏からスイス、ベルギー、ドイツでプレーし、現在はアメリカMLSのシンシナティに所属している。日本代表でも一時期主力として活躍。2018年のW杯ロシア大会メンバーから漏れて以来、日本代表からは遠ざかっているが、能力的にはもっと評価されていい。その他、京都ユース出身者には、角田誠や宮吉拓実、さらに現在ドイツで活躍中の奥川雅也もいる。そして現チームにも麻田将吾、若原智哉、福岡慎平、川崎颯太と期待の逸材がズラリと揃っている。
■G大阪:家長昭博
1986年6月13日、京都府生まれ。ジュニアユースでG大阪の門を叩き、高校3年時の2004年にプロ契約。強さと巧さを融合した緩急自在のドリブルで次々とチャンスを作り出し、激しい定位置争いの中でも“違い”を見せ、2005年のリーグ初優勝にも貢献した。その後、自身の特大の才能を生かし切れず、2008年から他クラブへ移籍した中で苦しんだ時期もあったが、30歳を超えてから充実期を迎え、川崎に加入して2年目の2018年にはJリーグMVPに輝いた。早くから下部組織を整備して関西で絶大なブランド力を有していたG大阪ユースからは、宮本恒靖に始まり、稲本潤一、橋本英郎、二川孝広、大黒将志、安田理大、倉田秋、宇佐美貴史、井手口陽介、堂安律と多くの名手が生まれている。その中で家長の日本代表出場3試合は物足りないものがあるが、それでも現在の彼のプレーを見れば、多くの者が“最高傑作”であることを理解するはずだ。