タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【写真】財団「エジミウソンファンズ・アジア」を設立したエジミウソン・モラエス氏
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あなたはどんな習い事をしていましたか。一生楽しめる趣味やいい友人と出会ったという人も多いでしょう。私も華道と茶道を習いました。今でも関連する美術展などを見に行くことが多いです。習い事は、世の中にはこんな楽しいことがあるんだな、すてきな人がいるんだなと知る機会になりました。けれど、その機会がない子どもたちがいます。
格差拡大とコロナ禍による打撃で、いま日本の子どもの7人に1人が、相対的貧困状態にあります。十分な教育支援が受けられず、進学を諦(あきら)めざるを得ない子どもたちも。習い事をする余裕もありません。習い事は、子どもが好きなことや得意なことを見つけ、新しい友達やいろいろな大人と出会うチャンスです。それも一つの大切な学びの場ですよね。やめさせなければならない親もつらいでしょう。
このほど、元サッカーブラジル代表のエジミウソン・モラエス氏が、エジミウソンファンズ・アジアという財団を設立しました。経済的に厳しい状況にある日本の子どもたちがサッカーを続けられるよう支援する財団です。エジミウソンさんは、子どものころに家庭が困窮(こんきゅう)してサッカーを断念しかけた時に、日本からサッカー留学に来ていた友人がくれた300ドルに救われたそうです。
私の次男も、オーストラリアで最初に仲良くなった子とは、サッカーチームで出会いました。
習い事を通じて少しでも子どもたちの世界が広がればと思います。もしあなたのお子さんがいま習い事を楽しんでいるなら、それを諦めている子のために、子どもの支援団体に寄付をするのもいいかもしれません。寄付について親子で話をすれば、お子さんの視野が広がります。
誰かに助けられた人は、いつか他の人を助けたいと思うようになります。その輪が日本でも広がるといいですね。
◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。
※AERA 2022年5月16日号