彼らの英語力が乏しいのは、使うことを前提に学んでいないから。和訳中心の授業のせいで、頭の中でまず翻訳する癖が染みついて、発話するまでに時間がかかる。正しい発音を教えられていないから、ローマ字やカタカナ英語に引っ張られて発音も変になっている。よく「カタカナ発音で大丈夫!」なんて言う人がいますが、大ウソです。実際アメリカでは、外国人に慣れていない地域に行くと、悲しくなるほど通じないのが現実です。また、日本人によくみられる、舌を巻いて音をこもらせた「英語ふう」な発音はもっと通じません。

 発音の障壁がなくなるだけで、話すのは楽になります。自分が発音できる音は、確実に聞き取ることができるし、にわかに信じがたいでしょうが、正確な発音や音のつなぎ方がわかると読み書きのスキルまでも格段に上がっていきます。

■めざすのはネイティブに一発で通じる発音

 ではどんな発音を身につけるべきか。日本人がめざすのは「ネイティブ同様の発音」ではありません。「聞き手が一発で理解できる発音」です。ネイティブ同様の発音を習得するのは、幼少期から英語圏に住んでいないと難しいですが、「通じる発音」は大人になってからでも訓練で身につけることができます。

 仕事で使う英語を習得したいなら、ネイティブの日常会話をすべて理解できる必要はありません。また、試験スコアや資格取得自体を目的にしないことです。僕自身アップル時代にたくさんのノンネイティブを採用しましたが、TOEIC のスコアを尋ねたことはありません。その人の英語力は5分も話せばわかるからです。それよりも「自分の専門分野なら英語でも日本語でも困らないレベル」をめざしましょう。

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