「英語を英語のまま理解することが大事」と語る松井博さん(写真/Brighture提供)
「英語を英語のまま理解することが大事」と語る松井博さん(写真/Brighture提供)
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 米アップル本社でシニアマネジャーを務め、アメリカに25年間住んだ松井博さんは、どのように英語をマスターしたのでしょうか。『AERA English2022』(朝日新聞出版)では、日本人が英語を習得するために心がけるべきことを聞きました。

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 初めて英語に触れた中学生のころ、英文科出身で教育熱心な母に、英語の教科書を丸ごと暗記させられました。この丸暗記という変わった勉強法が後々効きました。

 16歳で交換留学生として1年間、アメリカの現地校に通ったのですが、英語を話せないことは死活問題でした。クラスメートからは下手な発音をまねされ、ファストフード店ではオーダーが通じない。心の傷に塩を塗りながら必死に覚えました。

 日本語を頭の中で英語に翻訳して話したり、相手の話を和訳して聞いたりしているうちは、「英語が話せない人」と思われて相手にされません。頭の中の「翻訳作業」をやめて、話すスピードを重視しました。ここで中学英語を英語のまま丸暗記していたことが効き、比較的すぐに「翻訳癖」をなくすことができたのです。

 8月に渡米し、12月には周りの言っていることがわかり、帰国するころには会話を楽しめるようになっていました。帰国後はがぜんやる気が出て、海外の大学へ進学しようと、起きている時間の半分を英語学習にあて、洋書50冊、TOEFLの問題集を何周も解き、家でFEN(在日米軍向けラジオ)を流しっぱなしにしました。

■使うことを前提に英語を学ぶべきだ

 アメリカの大学を卒業後、エンジニアとしてアップルジャパンで働き始め、2002年に米国本社に移籍しました。スティーブ・ジョブズというカリスマ経営者の下、傑出した人材ばかりの中で、自分はネイティブでないからという甘えは一切通じない世界でした。

 そのころ、カリフォルニアに駐在している日本人に英語を教えてほしいと頼まれるようになったのです。みんな一流大学を出ているのに、英語で苦労している。日本の英語教育には根本的な問題がある、と感じました。

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問題は「翻訳癖」