次に期待がかかるのは防御率だ。今年のパ・リーグは歴史的な投高打低ということもあって、現在はリーグ3位となっているが、それでも1.47というのはかなりの高水準である。ちなみに過去の記録を振り返ってみると、歴代最高は1リーグ時代の1943年に藤本英雄(東京巨人軍)が記録した0.73、2リーグ制以降ではセ・リーグは1970年に村山実(阪神)が記録した0.98、パ・リーグは1956年に稲尾和久(西鉄)が記録した1.06となっている。

 打者の技術が進んだ現代野球で防御率0点台というのはなかなかハードルが高いが、過去に田中将大楽天)が2011年と2013年にともに1.27、山本由伸が昨年1.39という数字を残しており、佐々木の好調時の投球が続けば決して不可能ではないようにも思える。もし0点台を記録するようなことになれば、パ・リーグでは史上初の記録だけに、ぜひ狙ってもらいたい数字である。

 かつてイチローがメジャー新記録となるシーズン262安打を達成した時には、それまでの記録を持っていたシスラーが大きく取り上げられたが、新たなスーパースターの出現は過去のスターに再びスポットライトを当てるという効果も持っている。今回はメジャーな記録を紹介したが、今後も佐々木が快投を続けて、ありとあらゆる過去の記録が掘り返されることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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