どうか道を一本それることを知って欲しい。人知れぬ秘かな発見があってこそ旅は始まるのだ。せっかくコロナの行動制限が解除された連休に、以前と同じ人真似をしていてはつまらない。コロナで学んだことがあるとすれば、自分と向き合うことを知って流されないことではなかろうか。

 私の山荘のすぐ横、ふだんは誰も通らない林道で声がした。最近近くに出来た会員制クラブに来た一家らしい。犬を連れた両親と男の子。庭にいた私と目が合って、「こんにちは!」。嬉しかった。

 まわりにも新しい家が建つ。今回も玄関におしゃれなカードがはさんであった。

「隣に家を建築中の○○です。しばらくご迷惑をかけますが、どうぞよろしく。ごあいさつまで……」

 住みつく人も増えたが軽井沢の自然は厳しい。連休中も朝はマイナス二度になった。こんな日はとびきりの晴天なのだ。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

週刊朝日  2022年5月27日号

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下重暁子

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下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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