エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 大きな災害や事件が起きると、人々は感情を強く揺さぶられ、不安になります。そんなときに誰がどんな言動をするのか、よく気をつけるようにしています。東日本大震災が起きたときには、ツイッター上でフォロワーを増やそうと不安を煽(あお)るようなつぶやきを連発している人たちがいました。電話をかけてきて「極秘情報だけど」と信憑性(しんぴょうせい)の疑わしい話をする人もいました。なぜこの人はこんな発言をするのだろうか、なぜ私に電話をかけてきたのだろうか、とその本当の狙いを考えると、相手の立場を梃子(てこ)にして自身の影響力や発言力を増そうとする動機が窺(うかが)えることもありました。

 動揺し、悲しみや恐怖を感じているときには、誰しも何かに縋(すが)りたくなるものです。普段なら慎重になるような誘導にも乗ってしまいやすいので注意が必要です。また、悲しみや恐れは怒りに変換されやすいものです。自分とは意見の異なる人を見ると無性に腹が立って、正義感から非難したくなるかもしれません。あるいは感情に没入して、冷静に考えることを放棄してしまうことも。

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