どういうことなのか。早稲田大の関係者はこう補う。
「学内で、志願者数の減少はそこまで気にはしていません。総長も志願者の量ではなく、質が重要だと言っています。数字だけを求めるのであれば、併願制度を充実させれば、うちはもっと学生を集めることはできる。まだ確定的な評価はできないが、入試改革によって求める学生が取れている側面はあると思います」
実際、政治経済学部では受験者の変化も見られている。河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員によると、これまでは国立大の併願者とともに、文系の私大専願者が多く受験していたが、数学を導入したことによって、国立大を目指す層が受験者の多数を占めるようになっているという。近藤氏はこう説明する。
「早稲田大政治経済学部の入試を見ると、数学などの基礎学力があり、論理的な思考力などがある学生を取りたいという方針がわかる。一般選抜でありながら、大学が求める学生像に照らして選抜をする総合型選抜(旧AO入試)に近い思想を感じます。志願者数は減っていますが、高校時代に数学も含めしっかりと勉強した層や、東大や一橋大など難関国立大を目指すような学力が高い層が志願者の中心になっており、優秀な学生が入学していると見ています」
その結果、早慶にダブルで合格した受験者の進学選択にも変化が出ているという。河合塾のデータによると、慶應義塾大経済学部と早稲田大政治経済学部にダブル合格した受験生がどちらの学部に入学しているのかを見ると、17年までは慶應・経済が優勢であったが、18年から早稲田・政経が逆転。今年は早稲田・政経を選ぶ学生の割合が大きく増えているという。近藤氏はこう説明する。
「今年は早稲田・政経を選ぶ受験生が激増しました。これからの時代を見据えた入試改革の姿勢が受験生に受け入れられたのだと思います。他の学部でのダブル合格を見ても早稲田に勢いがある。早慶はだいたい10年スパンで人気の波が入れ替わってきましたが、これまでは慶應が人気の上で優勢だったのが、近年は早稲田の時代になりつつあるように見えます」