慶應義塾大学(左)と早稲田大学
慶應義塾大学(左)と早稲田大学

 早稲田大の志願者が2年連続で10万人を割り込んだ。特に看板学部である政治経済学部は、この2年間で7881人から4872人と、約3千人も志願者を減らした。他方でライバル慶應義塾大の志願者数は3万7千人前後で推移し安定している。しかし早稲田大は「数字は追い求めていない」と動じない様子だ。河合塾の分析では、早稲田大政治経済学部と慶應義塾大経済学部をダブルで合格した受験生の進学先はこの数年で変化し、今年は早稲田・政経を選ぶ受験生が「激増した」という。受験者の変化が起きている背景は何か。

【グラフ】早稲田・政経の志願者数、2年前と比べると

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「志願者が10万人を下回るなんて、早稲田は大丈夫なのだろうか」

 ある早稲田大OBはこう語る。早稲田大の一般選抜(共通テスト利用入試を含む)による志願者数は、2021年に約9万2千人となり、49年ぶりに10万人を切った。今年は若干増えたものの、約9万4千人にとどまっている。

 減少の背景には、18歳人口が減っているなどの社会的な影響や、総合型選抜・学校推薦型選抜(旧AO入試・推薦入試)などの拡大により一般選抜での定員を減らしているといった要因もあるが、早稲田大が実施した「入試改革」の影響が大きいと見られている。早稲田大では21年入試から、政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部で大学入学共通テストを必須化した。

 特に看板学部である政治経済学部では、入試科目に共通テストの数学I・Aを「必須科目」として導入した。私大文系学部の入試では数学がないか、あっても「選択科目」として入っているところが大半。早稲田大政治経済学部が実施した「受験者全員に数学を課す」というのは「大転換だった」(予備校関係者)という。

 その結果、政治経済学部の一般選抜の志願者数は、20年に7881人だったのが、21年に5669人と前年比72%の激減。22年にはさらに前年比86%の4872人と大きく減少している。

 早稲田大はこの減少をどう捉えているのか。大学に見解を尋ねると、「志願者数について数字を追い求めることはしておりません」と回答した。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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慶應と早稲田のW合格に驚きの変化