映画にもなった『82年生まれ、キム・ジヨン』以降の韓国文学ブームに続き、いま、韓国エッセイがブームの兆しをみせている。
【写真】韓国語の文芸書やエッセー、児童書などが豊富に揃う韓国本専門店「チェッコリ」
日本でも、「BTSのメンバーが読んだ」などのうたい文句とともに、翻訳出版が続く。5月23日には、韓国ウェブドラマの火付け役と言われる「恋愛プレイリスト」小説版の著者・アントイさんのイラストエッセイ『ほどほどに生きても、それなりに素敵な毎日だから なかなかな今日』が発売された。
アイドルグループgugudanのハナさんが出演したことでも話題になった「My Fuxxxxx Romance」の脚本家としても知られるアントイさんは、「人生を欲張りに生きてきた」と話す。だが、今回のエッセイでは、「陰キャ」でも「陽キャ」でもない、その中間の「中(なか)キャ」として、「ほどほどの幸せを感じながら、なかなかな人生を作る」過程を描いた。
彼女に変化をもたらしたものは何なのか。アントイさんにインタビューした。
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――幼い頃から「完璧」に近づくために、人生を欲張りに生きてきたというアントイさんが「“ほどほど”の幸せがあればいい」という心境にいたったのはなぜですか。
私は8年ほど会社員生活をしていました。「上司に認められたい」「ほかの同僚たちよりもかわいがられたい」という気持ちもあり、一生懸命に仕事をしました。でも、上司はそんな私の悪口を言っていた。その時、悟ったんです。「人に認められようと頑張ったところで、なんの意味もないのだ」と。必死になって生きる中で、多くのものを得ることができました。でも同時に、何を持っていても「完璧」にはなれないことも知りました。頑張って息苦しくなるのはもうやめよう。ほどほどの人生でも、そこそこ幸せなんじゃないか。そう思ったんです。私が29、30歳の時でした。
――そんなアントイさんのメッセージに、韓国で暮らす多くの人々が共感しています。どう感じていますか?
私を含め、韓国の20、30代の若者は「三放世代(サムポセデ)」と呼ばれています。