地下鉄エリザベス線の視察に訪れたエリザベス女王/5月17日、ロンドン(photo gettyimages)
地下鉄エリザベス線の視察に訪れたエリザベス女王/5月17日、ロンドン(photo gettyimages)

■実父に白いバラもなし

 メーガンさんはオバマ元米大統領の再選に貢献した女性を雇い、有給の育児休暇制度の創設を求めて議員たちにロビー活動をするなど、政界への道を絶えず探ってきた。王子と結婚後も米国籍を手放さなかったのは、将来の大統領選出馬を見据えての行動だったのかもしれない。

 さらに王子一家は、ネットフリックスのカメラをカリフォルニア州サンタバーバラ郊外にある自宅に入れて、生活ぶりを撮影させるといわれている。米国のお騒がせファミリー、カーダシアン家のライフスタイルをまねた作品を目指すのだろうか。

 5月24日にはテキサス州で児童19人と教員2人が銃乱射事件の犠牲になった。するとメーガンさんは早くも2日後には現場に姿を現した。子どもたちの名前が記された十字架に白バラを手向け、ボランティアにサンドイッチなどを配ると、感謝の声が上がった。ただ「予告なし」のはずなのに多くのカメラマンに囲まれ、ベストアングルの写真が出回った。ネットフリックスのカメラクルーがいたかどうかについては、不明とされる。

 その少し前に父のトーマス・マークルさん(77)が脳梗塞(こうそく)でメキシコから緊急搬送され、自宅から車で約2時間の病院に入った。5日後に退院したが、重い後遺症が残る。「父親には白バラはないのか」との批判が出たが、今のところメーガンさんからは電話もメールもないという。

 インタビューや書籍で王室批判をする。その一方で、王室行事に参加してロイヤルメンバーを強調する。英王族であるとしながら、米大統領を視野に入れる。プライバシーが何より大切と訴えながら、家庭内の日常生活を公開する。思いやりにあふれた優しい人間を自称するが、実父の緊急入院には知らんぷり。メーガンさんには、矛盾を矛盾とは捉えない強さがあるのかもしれない。メーガン劇場は、これからも波瀾(はらん)万丈だ。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2022年6月13日号より抜粋

>>記事の前編はこちら/メーガン妃の自伝ともなるアニメが制作中止 160億の契約金でネトフリが求めるのは「英王室の暴露もの」

著者プロフィールを見る
多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

多賀幹子の記事一覧はこちら