地域の医師不足を解消するため、大学医学部入試には「地域枠」があり、卒業後は指定の地域で何年間か働くことが条件になります。一方、診療科によって医師が不足していることも問題視されており、その解決策として入学時に診療科を決める「診療科枠」(具体的には「産科枠」など)もあります。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師がこの問題について語ります。
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医師の就職に関しては、私が医者になった2003年から大きく変化しています。当時はいろいろな診療科を研修するローテーションシステムは存在せず、医学部卒業後にダイレクトで希望する診療科に就職ができました。医局と呼ばれる大学病院の診療科に所属し、大学での研修後は関連する地域の病院に移動します。
現在は、医学部卒業後の研修先はマッチング制度を用いて希望の病院の試験を受け、見事マッチングすれば2年間の研修を行うことになります。研修期間が終わると、将来自分が専門としたい診療科を目指し専門医機構に登録し、ここの選抜に合格すれば専門医としての研修が開始です。
医学部を卒業した後のマッチングでは、人気の病院は倍率が高く合格は難しいものである一方、専門医機構への登録は競争は存在するものの希望の診療科には入れる状況です。つまり、場所を選ばなければ自分の専門分野は自分で決めることができます。
最近、医学部に入学する時点で専門分野をあらかじめ決めておく制度が検討されています。例えば、産科や小児科はその仕事の忙しさから、なり手が少なく、医師不足がたびたび問題となっている診療科です。こういった診療科に将来進むことを条件に医学部に進学してもらい、授業料の免除や奨学金を給付する制度です。特定の診療科の医師不足を解消する新しい制度として注目を集めていますが、メリット・デメリットがあります。
まずメリットですが、医学部に入学した段階ですでに人手不足の診療科を専門とする医師が確保できるわけですから、狙い通り特定の分野の医師不足を解消できる可能性があります。同じようなシステムは地域による医師不足を解消する”地域枠”と呼ばれるもので既に行われています。医学部入学時に、卒業後は”この地域で何年間か働くこと”を条件に授業料の免除や奨学金を給付するのです。地域枠は医学部を目指す人たちの中では毎年人気があり、いまだ十分ではありませんが地域医療の人手不足解消につながっています。診療科や働く地域を限定する枠は、経済的な事情で医学部に通えない人たちにとって魅力的な選択肢となっています。