できるだけ日本の現状に合ったケースを選びたい。先の社労士の三宅氏が、

「19年検証の結果が発表された当時、IVかVが妥当なところだろうと解説していました」

 と言えば、中嶋上席研究員も、

「今回のIII~Vは、8ケースに分けていた14年検証のEかその下あたりの経済前提と同じで、真ん中よりやや下ぐらいにあたります」

 元気とは言えない日本経済の実力を考えると、控えめに選んだほうがいいので、「ケースV」を採用した。「V」の主な経済前提は次のとおりである。

・物価上昇率0.8%

・経済成長率(実質)0.0%

・「マクロ経済スライド」が続く期間 厚生年金=32年度まで、基礎年金=58年度まで

 年金受給者としては、財政検証が行われた19年度に65歳になる会社員夫婦(同い年の専業主婦の妻との2人世帯)を想定、「生涯(20~59歳)の平均年収500万円」と「同700万円」の2通りを試算した。「500万円世帯」は国のモデル世帯に近く、「700万円」は標準よりもやや高給取りをイメージしている。

 年金額は月額で、夫婦2人分の老齢基礎年金(以下、基礎年金)と夫の老齢厚生年金(同、厚生年金)の合算額。また、これら年金額の社会的水準がイメージできるように、現役の平均月収(額面)も試算した。期間は会社員が100歳になる54年度までである。

週刊朝日 2022年6月17日号より
週刊朝日 2022年6月17日号より

 これらの結果を一覧表にした。

 ご覧いただけば一目でわかるように、年金額はほとんど増えていかない。冒頭で述べたように、年収500万円世帯では最初の「21.57万円」が35年後には「23.55万円」と約2万円増えるだけ。同700万円世帯では「25万円」が同じく「27.71万円」にしかならない。この間、現役の平均月収は「43.89万円」が「73.34万円」まで上がるのに、である。

 年金額のうち24年度から31年度までの網掛けしている部分では、500万円世帯も700万円世帯も同じ数字が並んでいる。それぞれ「21.83万円」「25.3万円」だ。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ