今年は年金大改正の年。改正点を生かして「老後資金を増やそう」と思っている方も多いだろうが、そんな期待が水の泡になりかねない「事実」がここにきて浮上してきた。何とこの先30年以上、現役世代は豊かになるのに「年金額」はちっとも増えないというのだ。
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ズバリ言おう。
現在の現役の平均月収は約45万円。一方、例えば生涯の平均年収500万円の会社員同い年夫婦が65歳でもらい始める世帯年金月額は約21万8千円だ。これが32年後の2054年度、現役の平均月収は約73万円まで上がるのに対して、年金月額はそのままもらい続けても23万5千円にしかならない──。
こんなショッキングな未来が高い可能性でやってきそうだ。週刊朝日編集部がニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員と共同して行ったシミュレーションで判明した。原因は年金の支給抑制策として実施されている「マクロ経済スライド」という制度にある。後で詳しく述べるが年金額を「目減り」させる仕組みで、それが長期間続くとこんな結果になるのだ。
それにしても現役の収入が6割以上上がるのに、年金額は1割弱しか上がらないというのは驚きである。なぜ、こうなるのか、順を追って見ていこう。
発端は「本当の老後マネーを知りたい」という素朴な興味だった。記者はファイナンシャルプランナー(FP)、日本FP協会の上級資格「CFP」を保有している。FPが将来の家計診断をする場合、毎年の収入や支出を予想して書き込み、収支や資産残高の推移をみる「家計の長期予想表」(「キャッシュフロー表」と呼んでいる)を作る。
要は、その「年金版」ができないのかと考えたのだ。年金受給者の家計の長期予想表を作るさい、今は収入欄には受給開始時の年金額をそのままずっと記入し続けることが多い。しかし今年度は0.4%下がったように、実際の年金額は毎年、改定されている。年金額の変化を推定し、人生100年時代に合わせて100歳までその動きを追えれば、老後のマネープランをより正確なものにできる。