大卒者の13人に1人が、ニートや無職になっているという現実を、どれだけの人が知っているだろうか。理由はさまざまだが、人間関係を構築するのが極端に苦手な人の場合、就職活動がうまくいかず一度「普通の人」のコースを外れてしまうと社会復帰が難しいことは想像がつく。再チャレンジ可能な社会の実現が提唱されて久しいが、実態はどうなのか。ある男性のケースから、世の中のあり方を考えたい。
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田原悠(仮名)さんは、現在27歳。スーパーでのアルバイトを始めて半年になる。
仕事は品出しやレジ打ちで、勤務は週5日。基本は9時から17時までだが、時には夜勤に入ることもある。
母親と二人の実家暮らし。父親は単身赴任中で、会社員の弟はひとり暮らしをしている。
悠さんは今の仕事に就くまで、大学を出てから一度も働いたことがなかった。
1年前から、若者の就職支援をする団体のサポートを受けるようになり、ようやく受かったのが今の職場だ。この半年間、仕事は一日も休まずに続けられている。周りからは「次は正社員」と言われるが、今はアルバイトで精いっぱいの日々だ。
「正直、自分としては正社員になるのはずっと先かなと思っています。今のバイトをいつまで続けるかもわからないけれど、職場が変わってもやっていけるような人になりたい」
■嫌われても仕方がない人間だった
悠さんは、子どものときから人との付き合いが苦手で、おとなしい性格だった。弟ともあまり仲が良くなく、ひとりでゲームばかりしていたという。
「小さいころ、友達はいましたか?」と聞くと、「友達、いたのかな? ときどき遊ぶ子はいたけど、友達だったのかな……」と考え込んでしまった。
不運なことに、小学校ではいじめにあった。
「嫌われても仕方がない人間だったから」
寄り添ってくれる先生もいなかったし、母親は「相談できる相手ではなかった」という。
「それはつらかったでしょうね」というと、「相談できる相手が見つけられなかった自分が悪いんです」という答えが返ってきた。