卒業した後も、1年くらい続けて相談室に通うことが許されたという。就職活動がうまくいかない悩みなども、聞いてもらった。しかし本来は、在学生が利用するための相談室。卒業して1年ほどたつとサポートは得られなくなった。

 在学中から就職活動はやっていたが、うまくいかなかった。書類審査は通っても、面接で通らない。質問にうまく答えられないからだ。何社も受けたが、ひとつも受からなかった。

 卒業後も就職活動は続けた。1年目は公務員を目指した。2年目は、「資格を取ったら就職につながりやすいんじゃないか」という母親のアドバイスで、資格の勉強をした。専門学校を受験したこともあるが、受からなかった。

 そうこうするうちに、コロナ禍になり、外出もままならない日々が訪れた。悠さんは、家に引きこもるようになった。毎日YouTubeを見たりして、ぼんやりと過ごしていたという。

「そのころは、人生を諦めていましたね。小・中学時代にいじめられていた日々とは、また違うつらさでした。もう消えてしまいたい、自分なんていなくなったほうがいいかな、と思うこともありました」

文部科学省の「学校基本調査(平成29年)」によると、大学卒業後に進学も就業もしない人の割合は7.8%。大卒者の13人に1人が、ニートや無職になっているという現実がある。その中には、働く意志はあるのに就職活動がうまくいかなかったという人もいる。悠さんもそのひとりだった。

 近年、少子化で学生に対する大学のサポートは手厚くなっている。学生数の多い私立でも、「キャリア支援」「就職支援」の体制が整い、相談体制やプログラムも充実している。だが、そうした大学の支援は、たいていは学生が卒業するまで。就活に失敗して卒業したとたん、社会との接点も切れてしまう人もいるのだ。

■あの電話がなかったら…

「ずっとこのままでいいのか? このままではいけない。勇気を出そう」

悠さんは、力を振り絞った。HPを検索していて見つけた、「ひきこもりやニートの社会復帰を支援する」という謳い文句のサポート団体に、連絡を取ったのだ。

 実は1年以上前から見つけて知っていたが、連絡する勇気が出ないでいた。「相談したいことがあります」というメールを書いたものの、送信ボタンがなかなか押せなかった。迷いに迷った末、ついに、ボタンを、押した……。

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