■ネットで詳細な遭難情報を提供

 最近、目立って増えているのがテント泊だ。

「いま、コロナ禍で山小屋は宿泊者数を抑えています。そのため、予約がとれない。『それじゃあ、テント泊で』という方が増えている。ただ、テントや寝袋、炊事道具など、背負う重量が増えるので、それなりの体力がないと、途中でバテてしまいます」

 もう一つ、増えているのが単独登山だ。登山用品店でも1人用テントがよく売れているという。単独登山であれば、ほかの人と予定を合わせなくても山に登れる、という気軽さがある。

「ただ、単独で登られる方によく言うんですけれど、『登山計画書を出してくださいね』と。たとえ、携帯電話を持っていたとしても、救助も呼べないような状況に陥るリスクは常にあります。なので、行き先やルートを家族や友人に伝えて、『もしものときの対策をとってください』と、呼びかけています」

 富士山や北アルプスに限らず、山の遭難は意外な場所でも発生している。

「過去に起こった遭難事例に学んでいただきたい、という趣旨で、5年前からインターネット上の『ヤマレコ 山岳遭難マップ』に遭難情報を提供しています。これを見ると、いつどんな遭難があったか、ひと目で分かります。登山を予定しているルートにどんな危険が潜んでいるのか、出かける前にぜひ見ていただきたいと思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)