ただ、「絶対にこうでなくてはならない」と執着するのも問題だ。「私にはこれしかない!」と思ってしまうと、脳はほかの選択肢を探すのをやめてしまう。選択肢が少ないと人は不安になり、緊張してますます脳が働かなくなる。つまり、脳が「フリーズ」状態になってしまうのだ。「AがいいけどBも悪くない」くらいに、自分の願望に幅を持たせておくほうが、引き寄せがスムーズにいく場合もある。

 繰り返しになるが、本心から明確に決意した物事は引き寄せやすい。しかし、執着しすぎるのは問題。そこの見極めが大切だ。

 ここでいよいよ、仕事でいい縁を引き寄せるコツの話。まず、自分にとっての「よい人」像を明確にする。性格は悪くても金払いがいい人? お金はないけど話が合う人? 仕事の中身や目的によって、「よい人」は違ってくる。次に理解しておきたいのは、誰にでも多面性があるということ。「あの人はすごく意地悪だけど動物には優しい」といった具合に、その人のよいところが出るか悪いところが出るかは、時と場合による。つまり、「よい人を引き寄せる」のは、あなた自身が“相手のよいところを出させてあげる”ということに等しい。

 もちろん、こんな能力は一朝一夕で身につくものではない。日頃からそういう意識で人と接する。いきなり初対面の相手に応用するのは無理なので、すでに出会っている人たちの中で、相手のいいところを見る訓練をする。その見方が自分にとって当たり前になると、ほとんどの出会いがよい出会いに変わっていくと加藤さんは言う。

「人間の脳は互いに共鳴し合うので、引き寄せたい相手に繰り返し丁寧に接していると、相手の脳が親近感を感じて、向こうから近づいてくるようになるんです」

 ただし、好印象を与えたいがための作り笑いなど「ウソ」や「芝居」はほどほどに。脳は見せかけの親切さや優しさにとても敏感なのだ。

(構成/生活・文化編集部 端 香里)