加藤俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。加藤プラチナクリニックを開設し、独自開発した加藤式脳画像診断法(MRI脳相診断)を用いて、小児から高齢者まで1万人以上を診断・治療している(写真/本人提供)
加藤俊徳(かとう・としのり) 脳内科医、医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。加藤プラチナクリニックを開設し、独自開発した加藤式脳画像診断法(MRI脳相診断)を用いて、小児から高齢者まで1万人以上を診断・治療している(写真/本人提供)

 今の職場がいわゆる「ブラック企業」で、そのブラックな状況を避けることに主眼を置く場合、「自分の短所・弱点が表面に出ない仕事」を選ぶことが大切だ。かつて加藤さんが担当した患者で、動きが遅いにもかかわらずスピードが重視される仕事に就いて、苦しくなってしまった、という人がいた。もっとも弱いところがもっとも目立つ形で出てしまう職業を選んでいたわけだ。

 なぜそういう選択ミスが起きるのか。自分の得意・不得意を客観的に把握していないからだ。自己認識が弱い人は往々にして自己肯定感が低い傾向にあり、「自分にはたいしたことができないから、とりあえず就職しやすい会社に入ろう」と誤った選択をしてしまう。これから就職・転職する人はぜひ、周囲の人に「私の長所・短所はなんだと思う?」と聞いてみてほしい。そして、人から聞いた自分のよいところは必ずメモしておく。第三者の視点を取り入れることで、客観的な自己分析ができるようになる。自分自身に関する情報を「好きなこと・嫌いなこと」「自分が影響される言葉」など、文字にして可視化するのが、加藤さんが勧める「自己認識」の方法だ。

 自分にとって劣悪な職場を「引き寄せない」ためにも、自分の弱みを客観的に把握し、仕事選びの基準にしてほしい。

 そして、脳が「引き寄せ」を始めるためにもうひとつ大切なことが、「決意」だ。会社を辞めたいのなら「辞める」、結婚したいなら「結婚する」と明確に決めることが大前提になる。加藤さんは言う。

「脳の働きの強さは決意の強さに比例するものだからです。逆にいうと、なんとなくこうなればいいなぁ程度の決意では脳が思うように働くことができず、引き寄せの精度が低くなります」

 決意を固めたつもりでも、実は本心ではなかった……ということもある。なぜそうしたいのか? 何が目的でそうなりたいのか? という理由をはっきりさせれば、その「理由」が脳の新たな判断基準となり、今までとは異なる選択肢を引き寄せてくるという。理由付けが明確でないために物事の判断がつかず、選択が甘くなる……こんなことを繰り返していると、せっかくの引き寄せを取りこぼすことになってしまう。

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執着しすぎると脳が働かなくなる