だとすると、誰しも「繰り下げ」以外の防衛策が必要になる。いわゆる、「マネー対策」である。

 お金を増やす王道、(1)収入を増やす、(2)支出を減らす、(3)今あるお金を運用して増やす、の三つは、常に念頭に置いて実践し続けなければならない。(1)で言えば、やはり「長く働く」だし、(2)は固定費、とりわけ金額が大きい固定費の削減が柱になる。そして(3)は、高年齢になると高いリスクは取れなくなるが、「長期・分散・積み立て」を生かした長期投資ならかなりの年齢まで可能だろう。

「三つの実践を行っているのが前提ですが、それ以外の面、例えばふだんの生活では若い世代を見習って、受給世代ももっと情報収集に励んではどうでしょう」

 こう話すのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の風呂内亜矢さんだ。高齢者向けのサービスに力を入れる企業は多いし、高齢者向けでなくても高齢者に有利と思われるサービスが数多くあるという。一つひとつは小さいが、「マクロ経済スライド」と同じで「ちりも積もれば……」だ。

「例えば、スーパーの『シニア割』です。イオンやイトーヨーカ堂には、シニア専用の電子マネーサービスがあり、特定の日に5%割引などの特典が受けられます」

 確かに、シニア向けのサービスは世にあふれている。60歳以上は映画が「1200円」。入場料を半額にしている観光施設も多い。当日、空席なら安く乗れる飛行機のシニア割引もあり、買い物やレジャーを安くできる。

「お金の運用でも、すぐ『投資』と思うのではなく、ネットで情報を探していれば思わぬ『お得なサービス』に出会うこともあります。例えば、あおぞら銀行のネット専用支店では、普通預金の金利が0.2%もつくんです。メガバンクのそれは0.001%ですから実に200倍です」(風呂内さん)

「0.2%」は低いと思われるかもしれないが、余裕資金500万円を別の銀行から移し替えるだけで「年約8千円」(税引き後)も利子がつく。

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