結果は表の左の2項目を見てほしい。やはりかなり違う。両者の差は10年で約1.5万円。20年で約3万円に広がり、100歳では物価連動の年金額が「28.42万円」で差は約5万円まで広がる。35年間の総受給額では、「目減り」する年金の「9661万円」に対して、物価連動の年金額は「1億719万円」。こちらの差は「約1060万円」である。

「現役の収入に対するアプローチ」では35%目減りし、「実際の年金額からのアプローチ」では物価上昇分より約1060万円少なくなる年金額。さて、これをリカバーする防衛策である。

 年金制度の中で考えられる防衛策はただ一つ、今年の年金大改正でも注目されている「年金繰り下げ」を使うことだ。65歳からの受給開始を遅らせて年金額を増やすのだ。1カ月遅らせるごとに0.7%増やせる。

 まずは「実際の年金額からのアプローチ」で「繰り下げ」効果を見ていこう。

 4月から上限が70歳から75歳に引き上げられ、最長10年の繰り下げが可能になったが、さすがに「防衛策」としての繰り下げはそこまでは必要ないだろう。そこで、「目減り」する年金額を1~5年繰り下げた場合の年金額と総受給額を試算してみた(表の右側、「マクロ経済スライド」は反映ずみ)。

 それぞれの受給開始時の年金額を見てほしい。改めて「繰り下げ」の威力に驚かされる。1年遅らせるごとに月額約2万円ずつ金額が増えていく。5年繰り下げると42%増(0.7%×12カ月×5年)で、同「30.99万円」と30万円の大台を超える。

 ただし「目減り」防衛策としての威力では、「勝敗ライン」をどこに置くかで微妙な違いが生まれそうだ。比較の対象は、ここでも「物価と完全連動した年金額」だ。

「毎月の年金額が物価連動の年金額を上回る」を基準にすると、「3年以上」は最初から100歳まで追い抜かれることはない。「2年」だと「92歳」を超えると完全連動に追い抜かれてしまう。ただし、「その年齢まで抜かされないのなら、十分」と思う人もいるかもしれない。

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