夫とは片づけながら少しずつコミュニケーションしました。「お前には無理だ」とか言われそうだから最初は内緒に。行動しているのを見せて部屋がスッキリしていく中で、まるごと家を片づけていること、相手を理解することやコミュニケーションについても学んでいると伝えていきます。
もともと物を減らしたかった夫は協力的でした。大物を運んだり、動線検証に協力したり。だけど、途中で何かに触れて怒らせてしまったことも。ちょっと言いすぎたかなと思った夫が今度は仕事の人間関係の相談を彼女に持ちかける。みたいに、波もありながら前とは違う会話ができるようになっていきました。
「夫が2人きりのとき、子どもたちが巣立ったら2人でこうして食事なんだろうね、なんて言い出して。そのときこんな勉強やりたいんだって言ったら『いいんじゃない』って。私を尊重してくれるというか」
彼女も夫の考え方をもっと深く理解しました。物の整理や動線の考え方は夫のほうが得意で、これまで夫はこれを言っていたのかと気づいたり、夫婦関係の思い込みもはずれて、どんどん変わっていく感じがすると話してくれました。
変わってく母の話を聞いて、娘が手紙をくれました。
「新しいこと、やりたかったことにチャレンジしているママの姿が見られてすごく嬉しいと同時に刺激をもらっています。ママの人生これから楽しいことが待っているね」
と綴られ、すごく安心しているようす。
これからはネガティブだった自分の影響を受けた娘が、もっとラクに生きられるように、気づいたことを活かして支えていくそうです。そして「いろいろ乗り越えたいまの自分なら、社会で役に立てると感じる」と自信を取りもどし、通信制の講座での資格取得に向けた一歩を踏み出しています。
今回は遠くから参加した女性のお話でした。昨今の状況で自然や動物としか関われないうえに、家庭でも孤立していました。支えになったのは「顔を見られるだけで嬉しかった」女性たちの横のつながり。一人じゃないからできると、いまも日本のいろんな場所で、人生と汚部屋をリセットする女性たちが頑張っています。
◯西崎彩智(にしざき・さち)
1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・家族間コミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト®」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。NHKカルチャー講師。「片づけを教育に」と学校、塾等で講演・授業を展開中。テレビ、ラジオ出演ほか、メディア掲載多数。