人気は名門伝統校とグローバル教育重視校
23年入試は競争がさらに激化か
まず首都圏模試センターの北一成教育研究所長は22年入試について、「前回21年入試以上に『安全志向』が強まったことで、難関校や上位校の受験者数はむしろ横ばいか微減のところが少なくない。目下の受験者増は中堅校を中心に起きている」と指摘する。
また、「大きく二つの特徴がある」と分析するのは、SAPIX(サピックス)の広野雅明教育情報センター本部長だ。
「一つは立地の良い名門伝統校の復活。京華や暁星、獨協、跡見学園、実践女子学園、山脇学園、駒込あるいは東洋大京北といった好立地の伝統校が受験生を集めている。ブランド力や授業の質は高いものの、昨今は偏差値が少し下がり気味でお得感があった学校といえる。もう一つは、グローバル教育を重視する学校の人気。渋谷教育学園幕張、同渋谷や広尾学園、かえつ有明、三田国際学園、開智日本橋学園、そして昨年に開校した広尾学園小石川といった、海外留学や海外大学進学を見据えた教育が売りの学校の受験者が増えている」(同)
だが、そもそも、これほどまでに中学受験が過熱しているのはなぜか?
その理由はまず、「コロナ禍によって公立中学の教育に対する不安が広がったことで、わが子により良い教育環境を求める家庭が急増している」(四谷大塚の岩崎隆義情報本部本部長)ことがある。コロナ禍によって露呈した、ICT(情報通信技術)教育に代表される公私の教育格差が根底にあるわけだ。
もともと近年は中学受験を目指す家庭が増加傾向にあった。その背景にあるのは、20年度の「大学入試改革」と16年度から始まった「私立大学入学定員厳格化」だ。受験レースの“ゴール”である大学受験の先行きが分からず、コロナ禍以前から、小学生の子どもを持つ親たちの不安が増大していた。コロナ禍はその流れをさらに加速させたというわけだ。
「結果、強まっているのが学校選択の『多様化』。そうした家庭は必ずしも難関校志向ではなく、わが子に合った教育環境を考えて受験校を選ぶことが多い」(同)という。
加えて、広野氏は、「目下の受験者数と受験率の上昇の大本には、人口動態がある。一極集中の東京都、中でも人口が増えている港区や中央区、江東区、文京区など都心部はもともと中学受験熱が盛ん。そのエリアの人口増加によって受験者数増、受験率増が起きている」とみる。
問題は、この首都圏における中学受験ブームがコロナ禍を背景とする一過性のものではなさそうだということ。「少なくても新小学6年生が受験する23年入試では、より激しくなるだろう」と塾関係者は異口同音に言う。
そして、「ともすれば新小学1年生が中学受験を迎える頃まで続いてもおかしくない」と言うのは、岩崎氏だ。その根拠は、四谷大塚が実施する「全国統一小学生テスト」の受験者数の推移にある。
21年の受験者数を19年と比べると、コロナ禍で減るどころか低学年になればなるほど増えている。中学受験予備軍の数を見れば、むしろこれからがブームの本番とさえいえそうだ。