リーダーは「予断」してはいけない
──なるほど、そういう否定されない空気ができていると、発言もしやすそうですね。
佐久間:逆に、メンバーが自己否定されがちな組織だと、チームのパフォーマンスは一気に下がりますよね。あと、空気がピリピリしていて、いつも部下が怯えているような職場って、だいたいはリーダーが「予断」している──つまり、「相手が何かを言う前から自分の中で勝手に判断してしまう人」がトップにいたりするんです。
そうやって「予断」で決めつけたり、否定から入ったりする上司のもとで働いていると、部下は潰れてしまうんです。たとえば、「若いからこういう意見になるに違いない」とか、「女性だから」とか。そういう偏見を持って部下と接していると、メンバーは本音の意見を言ってくれなくなります。「勝手な偏見で判断されるなら、どんなにがんばっても意味ないだろうな」と思ってしまいます。
──たしかに……。「この上司には、何を言っても無駄だ」と思わせないようにする、というのが大事なのかもしれませんね。
佐久間:あと、やった仕事の良し悪しは評価するべきですが、人間性にまで踏み込まないことも大事だと思います。「お前は何度も同じ失敗をするから、ダメなんだ。お前という人間のこういうところを変えろ」みたいに、人格否定までしてしまうと、それこそ新しい提案をするのが嫌になってしまいます。
いつも予断されたり、「扱われ方が雑」だと感じたメンバーは、仕事の質が下がります。だからメンバーに「自分は大事にされている」と感じさせるのも、リーダーの重要な仕事。どんなに忙しくても余裕がなくても、決して「雑に扱われた」と思わせてはいけません。
メンバーひとりひとりが「役に立ててよかった」「自分がこのチームにいたからこそ、この結果になったんだ」と誇りに思えるように、メンバーの「いいところ」を見つけて、ちゃんと言葉で伝えることが大事です。
苦手なことやまわりに比べて劣っているスキル、能力ばかりに注目しても、人は伸びません。むしろ潰れてしまいます。一方、褒められればそれは必ず記憶に残るし、たったひとりからもらった小さな一言が、部下のその後の自信に繋がることも大いにある。リーダーはそんなふうに考えるといいんじゃないかな、と思います。