「らあめん clover」の醤油らあめんは一杯800円。チャーシュー、ゴボウ、カイワレ、ネギ、ノリがのせられている(筆者撮影)
「らあめん clover」の醤油らあめんは一杯800円。チャーシュー、ゴボウ、カイワレ、ネギ、ノリがのせられている(筆者撮影)
この記事の写真をすべて見る

 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。地元・千葉県産の食材をふんだんに使った美しい一杯を提供する店主の愛する一杯は、同じ千葉で同じ日にオープンした「永遠のライバル」が紡ぐ真っすぐな醤油ラーメンだった。

【写真】食材の複雑なうまみが美味しい!千葉の「和風」ラーメンはこちら

■「はじめの5年間は土台作り」 斑鳩出身の店主が作った一杯

 JR成田駅から徒歩6分。千葉県産の食材を生かしたラーメンで人気の店がある。「らあめん clover」だ。

 2010年9月にオープンし、名店「九段 斑鳩」(東京都千代田区)出身の店主・藤岡敬大さんによるラーメンはシンプルながら見た目にも美しい。地元産のゴボウが食感のアクセントとなり、オリジナリティーあふれる一杯に仕上がっている。

らあめん clover/〒286-0033 千葉県成田市花崎町766-2/平日・土曜11:30~14:00、18:00~22:30、日曜11:30~15:00※共にスープ切れ次第終了、水曜定休(祝日の場合営業)/筆者撮影
らあめん clover/〒286-0033 千葉県成田市花崎町766-2/平日・土曜11:30~14:00、18:00~22:30、日曜11:30~15:00※共にスープ切れ次第終了、水曜定休(祝日の場合営業)/筆者撮影

 オープン半年後に東日本大震災が起き、しばらくは集客に苦戦。だが、3年ほど経つと常連客が増え、「だんだんと忙しくなってきた感覚」になったという。ラーメン店を続けることは、本当に大変なことなのだ。

「はじめの3年間は本当に厳しかったです。耐えましたね。お客さんにアルバイトで手伝っていただきながら、何とかお店を運営していました」(藤岡さん)

 藤岡さんは、オープンからとにかくラーメン界のトレンドを追いかけてきた。しかし、トレンドに敏感になりすぎて味が安定しなかった。

「もともとラーメンの食べ歩きが趣味だったこともあり、アンテナを常に張っていて情報にあふれているんです。その中で自分らしさをどう出していくかを追求しました。ブレずに作っていると、おのずと売り上げも伸びていきました。今は自分が作っている一杯に向き合い、突き詰めていく感覚です」(藤岡さん)

「らあめん clover」店主の藤岡敬大さんは「九段 斑鳩」出身。ラーメン作りはもちろん、おもてなしの心も学んだ(筆者撮影)
「らあめん clover」店主の藤岡敬大さんは「九段 斑鳩」出身。ラーメン作りはもちろん、おもてなしの心も学んだ(筆者撮影)

 売り上げは毎年少しずつ増加。6年目には、鶏の清湯系スープのブームも後押しして前年の1.3倍になった。はじめの5年間は土台作りの期間だったと藤岡さんは捉えている。店の周りの掃除を通して、近隣の人とコミュニケーションを大切にするなど、地元に密着して店づくりをしてきたことも功を奏した。地元のお客さんが多く、コロナ禍でも売り上げがほとんど落ちていない。

 開店して11年。次の目標は、20周年だ。店主の体力を考えても20年間続くラーメン店はなかなかない。だが、若くして独立した藤岡さんは20周年を迎えても49歳。まだまだ店に立ち続けられる。

 そんな藤岡さんの愛する一杯は、同じ千葉県で、同じ10年9月17日にオープンした店のラーメンだ。開店当初からのライバルが紡ぐ、真っすぐな醤油らーめんである。

次のページ
ある日、会社が突然倒産