
こうして11年、「東京駅 斑鳩」がオープンした。開店当初はオペレーションに苦しみ、長い行列はできるものの売り上げは下から2番目だった
「九段下の本店では“クレーム”というものはほとんど発生していませんでした。それは、うちのお店を目指して食べに来てくださる方が多かったからだと思います。ただ、東京駅は何かの用事のついでで来られる方がたくさんいます。その中で、クレームに発展してしまうことがありました。私も本気で作っているので、お客様と口論になってしまったこともあります。しかし、それは大きな間違いだったんです」(坂井さん)
お客さんはあくまでラーメンを食べに来ているのであって、坂井さんの作品を見に来ているわけではない。このとき、坂井さんは自分がクリエーターかぶれになっていることに気づいたのだ。商売の基本に立ち返り、クレームに対しては、まず謝る姿勢を見せるところからスタートした。ここで坂井さんはいちラーメン店主として、目が覚めたという。
「『東京ラーメンストリート』のある『東京駅一番街』は“一番”しか入れない場所です。そこに入れていただいただけで名誉ですが、ここで商売の原点に立ち返らせてもらいました。ここからまた新しい『斑鳩』がスタートしていきました」(坂井さん)

「斑鳩」に食べに行くと、どんなに忙しくても常に笑顔でラーメンを作り続ける坂井店主の姿がいつも印象的だ。ラーメンのおいしさだけではない、店の空間自体の心地よさを感じる。20年以上も続くラーメン店には、必ず理由があるのだ。
16年には本店を市ヶ谷に移転。現在は昼営業のみとなっているが、今後は昼夜のフルオープンに向けて準備しているという。坂井さんはこれからも厨房に立ち続け、味のブラッシュアップも重ね、さらなる存在感を示していきたいという。
■まずは道の掃除… 成田の名ラーメン店が始めた「基本」
JR成田駅から徒歩6分。千葉県成田市役所の近くの栗山公園の横に一軒の人気ラーメン店がある。「らあめん clover」である。ツタの絡まるおしゃれな店構え。千葉県産の食材にこだわった一杯を提供し、店の前には「千産千消」という造語の看板が出ている。

看板メニューの「醤油ラーメン」は鶏ベースのあっさり系。醤油の香りとうまみがキリッと立ちながら口の中に広がり、とてもおいしい。ゴボウが入っているのが独特で、これは成田山にまつられるゴボウをヒントに地元産のものを使っている。シンプルながらこだわりもしっかり見える素晴らしい一杯だ。