「私は『69’N’ROLL ONE(ロックンロールワン)』や『支那そばや』の味に衝撃を受けて育った世代です。なので、鶏の利いた清湯のラーメンで独立したかった。自分の原点にある味で勝負したかったんです」(藤岡さん)

 店の場所は自分の通っていた高校のある成田に決めた。もともと社会人時代に働いていたのも成田で、土地勘のある場所だった。同級生がやっていた居酒屋の居抜き物件を使えることもあり、条件も良かったのだという。

 物件はスムーズに決まったが、ラーメン作りに時間がかかりすぎた。試行錯誤しながら、自分の技術がまだまだであることを痛感する日々。名店「斑鳩」出身ということで、いざオープンすれば注目が集まることもわかっていた。気づけば物件を借りてから半年が経過。足踏みする藤岡さんに声をかけてくれたのは、坂井さんだった。

「坂井さんが『評論家さんやラーメンフリークには情報を流さないでおくから、細々とオープンしてみな』と言ってくれたんです。営業しながら細かい部分を修正していこうと提案してくれました。本当に心配してくれていたんです」(藤岡さん)

「らあめん clover」の醤油らあめんは一杯800円。チャーシュー、ゴボウ、カイワレ、ネギ、ノリがのせられている(筆者撮影)

 こうして10年9月「らあめん clover」はオープンした。「clover」とは“「c」hiba 「love」「r」amen”の頭文字を取ったもの。鶏清湯をベースに、千葉の食材をふんだんに使った一杯を作り上げた。

 細々と営業していこうと思ったオープン初日、思いがけないことが起こる。同じ成田の人気店である「麺や 福一」の店主が食べに来てくれたのだ。「斑鳩」時代の藤岡さんを見ていた「福一」の店主が、良かれと思い千葉のラーメンフリークに向けて店を宣伝したことをきっかけに、「clover」オープンの情報は、一日にしてラーメン界に広がってしまったのである。

「『福一』さんが宣伝してくださったことはとてもありがたいことなのですが、オープン初日から落ち着かない形になってしまいました。オペレーションは大丈夫でしたが、商品はブレブレでした。納得いくものが出せない日々でしたね」(藤岡さん)

 バタバタしたまま半年が過ぎた頃、東日本大震災が起こった。これを機に、客足がパタッと止まる。藤岡さんは、この店に地元のお客さんが全く来ていないことに気づいた。

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