一日中仕事を詰め込んでいたのも、子どもたちを一人で養っていく覚悟を決めていたから。もともと人一倍責任感が強く、自立のため、子どものために働くのはまったく苦にならない。そんな性格もあって、身を粉にして働いていたのでした。

 ただ、離婚を現実的に考えはじめて“離婚コンサル”を受けたとき。離婚後の生活について考える中で彼女は、「なんか違う。離婚したいんじゃないかも」と気づいたのです。

 では、どうしたいのか。これまで、子育てから人間関係までさまざまな講座に参加する度に、「今、何にもとらわれず、何の制限もないとしたら何をしたいですか?」と聞かれ、必ず「家を片づけて、心地よい空間にしたい」と答えていたことを思い出しました。

「やっぱり片づけなきゃ、結局何も回らないじゃん」と思った折に、家庭力アッププロジェクトが目に留まったのでした。

 プロジェクトがはじまると、彼女は自分を追い込みました。6人家族の家財の片づけは、なかなか手ごわいものです。4人の子どもの個人情報が書かれた捨てにくい書類、大きなお鍋、使わなくなった電子オルガン。物をあえてベッドの上に広げ、「片づけるまでは寝られない作戦」も使って進めました。

中身を全部出して仕分け。部屋がもっとも散らかるこの段階が、実は一番つらいんです/Before
中身を全部出して仕分け。部屋がもっとも散らかるこの段階が、実は一番つらいんです/Before

 それでも回らなかったので、彼女は夜の仕事を半分にして、時間と体力を確保しました。以前なら仕事を最優先していたところですが、勇気を出して本当にやりたいことを選択したのです。彼女の中では大きな一歩でした。

 そして45日間で見事に片づけきります。単身赴任から帰ってきた夫を、片づいた部屋で迎えることができました。

 3カ月ほどたち、彼女からメッセージがありました。すると夫のLINEが既読になり、返信も来るようになり、必要な会話ができるまでになったと教えてくれました。夫は子どもの学費や将来も考えていて、離婚なんて頭になかったとわかったんですって。

「LINEは、了解、とか一言だけなんですけどね」と言う彼女はうれしそう。夫の同級生に聞いても「あいつはそういうやつでしょ」って言うし、「自分が相手に求めすぎていたのかも」と、夫のペースを尊重できるようになりました。

「夫は片づけ前と後で、何も変わってないんです」

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自分は相手を信じていなかったのかも