淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授
淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授

 在宅介護の助けとなる訪問介護員(ホームヘルパー)。いま、その約4割が60歳以上となり、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が増えています。その一方で、特別養護老人ホームなどの介護施設にも近年、変化が起きています。現在発売中の週刊朝日ムック『高齢者ホーム2022』から抜粋して紹介。

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■在宅も人手不足 早めに決めよう

 肺炎で入院したC男さん(85歳)は、筋力が落ち車いすの生活を余儀なくされました。現役時代、高い役職に就きプライドも高く、デイサービスを拒否。訪問介護を利用するも、妻が「人が来るなら掃除やおもてなしをしなくては」と気を回し、疲れがたまる一方。ケアマネジャーからはホーム入居も提案されますが、「夫の面倒は自分で見る」と妻の介護が続きます。

 しかしある時、妻が病気で入院することに。C男さんはその間ショートステイを利用しますが、ホームになじめず家に戻ります。妻は退院後も「夫の世話は妻の仕事。ホームに入れるのはかわいそう」と考えており、C男さんの面倒を見ていますが、自由な時間が取れず、時には愚痴が出る始末。夫婦ともに不満をもつ日々が続いています。

 家で過ごしたいためになんとか在宅介護サービスを利用しつづけているC男さん夫婦。実はいまや、介護従事者が足りないことで懸念される「介護難民」の問題が、在宅介護にも広がっています。淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授はこう説明します。

「ホームのスタッフだけではなく、近年はヘルパー(訪問介護員)を集めるのも大変です。希望者の多い朝の時間帯などは、指定して来てもらうことがなかなか難しいことも。また今、全国のヘルパーの約4割が60歳以上。老老介護が主流となっており、力のいる身体介護はなかなか頼みにくい状況にもなりつつあります」

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ここ10年で変わった、老人ホーム勢力図