撮影:元田敬三
撮影:元田敬三

 元田さんは自分の撮り方を「闘争本能みたい」と言う。

「体でぶつかっていくような感じで、ストロボをパーンとたいて。けっこう失礼だな、と思ったりするんですよ。でも、こっちがグッと行ったときに、相手も負けずにグッと来てくれたら、そこでダーンとぶつかり合う。そのぶつかり合いみたいなことがすごく面白い」

 画角が極端に広いので「ある意味、適当で、どう写っているか? みたいなところがある。失敗も多いけれど、それを現像して見るのも楽しみ」。

「35ミリで撮っていると、写真がだんだん上手になってきて(笑)。予定調和になっちゃって、画面からはみ出てくるものがなくなっていくような気がした。学生のころの写真を振り返って見ると、へたくそじゃないですか。カメラを振り回している、感じの。でも、そんな決まっていないところが、すごくいいな、と思って。だからいまは、へたくそになりたい、みたいな気持ちがある」

撮影:元田敬三
撮影:元田敬三

■「これでいいんだ」と確信が持てた

 元田さんは18、19年にキューバを訪れた。

「1回目は富士フイルムの仕事で。『どこか、行きたいところ、ないですか?』と聞かれて、ぱっと思い浮かんで、『キューバに行きたいです』って、言ったんです。たぶん、古いアメ車とか走っているからだと思うんですけれど」

 元田さんは「バイクとか、車とか、ダメなんですよ」と言う。「もう、カッコイイのを見かけたら撮っちゃうんです。どうしようもなく」。

 講師を務める東京ビジュアルアーツで南米出身の学生から「すみません、撮らせてください」というスペイン語だけ教えてもらい、ハバナへ飛んだ。

「そう言って撮っていたら、すぐにみんなと仲良くなって。毎日、お酒を買って、路上飲みをしていた。結局、大阪でも、東京でも、キューバでも、人間なんて、いっしょやないか、と思った。気が合わない人とは合わないし。怒るときは怒るし。『変な人やな』とか、『撮らせてください』と言ってできた人との関係とか。純粋にそれがめちゃめちゃ面白くて、いいな、と思った。そんなこともあって、日本でも撮りやすくなった。自分がやりたいこと、やっている方法が、これでいいんだ、と。確信が持てた」

 大阪時代の写真には笑顔が少なかったという。

「ちょっと悲しげな表情というか。でも、最近は笑っている人の写真、多いですね。『御意見無用』もけっこう、笑っているなあ、と思って」

アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】元田敬三写真展「御意見無用」展
入江泰吉記念奈良市写真美術館 8月26日~10月24日

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