写真家・元田敬三さんの作品展「御意見無用」が8月26日から入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催される。元田さんに聞いた。
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元田さんいわく、「自分は大阪の人」だそう。
「大阪の人って、知らない人でも、ふつうに話しかけたりするんです。電車でたまたまとなりに座った人に『いいセーター着てるね』とか。ぼくも人に話しかけて写真を撮るのが好きというか、肌に合っている。すごく緊張するんですけれど、撮りたい人を見つけたら、どうしようもなく撮りたくて、話しかける。話しかけることで何かが起こるみたいな感じがいつもしていて、『すみません、撮らせてください』って言うんです。大阪でも、東京でも」
■写すのはみんなが撮りたい人
展示作品に駅の地下道で写した女性の写真がある。
<2018年11月3日。鶯谷駅で女性に「写真を撮らせてください」と頼むと「なんで私が〇〇女優と解ったの?」と意味不明な返答。意気投合して山手線で五反田まで付かず離れず30分>(『渚橋からグッドモーニング』ふげん社)
元田さんが興味をひかれ、撮りたいと思う人は「ほかの人が撮りたいと思う人と変わらない」と言う。
「ぼくが写真を撮っていると、いろいろな人がまわりでスマホで撮ったりする。結局、ぼくだけじゃなくて、みんなこの人を撮りたいんじゃん、みんな一緒やん、って、思うわけですよ。ぼくは特別なことをしているわけじゃない」
ストロボをつけた大きな一眼レフを首から下げ、撮りたいと思う人と出会うまでひたすら街を歩き続ける。
「カメラはでかいほうが絶対にいいですよ。『撮ってます!』という感じが相手に伝わるから。このライカR8にしても、『何これ?』みたいな、いかにも盗撮で使われないようなカメラでしょ。やっぱり、安心感がありますよ、撮られる人にとっては」
撮影をお願いして、断られることはほとんどないという。
「撮らせてほしい人って、『服を作っています』とか、仕事やお金を稼ぐこと以外に好きなことをやっている人が多いから、ぼくの思いは意外と伝わります」