現代は、「寝つきが悪い」「眠りが浅い」など、睡眠のトラブルを抱えている人が少なくないでしょう。私たちの体は、朝起きてから15~16時間で、睡眠ホルモンのメラトニンが分泌され、眠気が訪れるようになっています。ですから、起床時間を一定にして体内時計を整え、同じリズムでメラトニンを分泌させることが、夜にしっかりと眠るコツ。さらに起床後は朝日を浴びることも忘れずに。24時間よりも少し長くなっている体内時計のリセットに欠かせません。
スムーズな入眠には、体を温めておくことも大切です。それには入浴が一番おすすめ。大事なのはお湯の温度です。湯温は40度を超すと自律神経のうち交感神経が優位になるため、神経が高ぶってしまい、すぐに寝つくことができません。けれども、40度以下であれば副交感神経が優位になるので体がリラックス。さらに疲労因子が増えて体がぐったりと疲れるため、入眠もスムーズです。
全身浴にするのも大事なポイントです。全身に水圧がかかり、心臓に戻る血液が増えることで心臓から出ていく血液も増え、結果、血流がよくなります。その他、次のようなことを心がけましょう。
【お腹はしっかり温める】
胃腸のあるお腹周りは1年中冷やしたくないパーツ。夏でも使える薄手の腹巻を着用するなどし、寝ている間も冷房で冷えないように気をつけましょう。素材は吸放湿性の高いシルクがおすすめです。また、大きな筋肉のある太ももや二の腕は血流が豊富な部位なので露出しないようにしましょう。
【0時までに寝よう】
東洋医学では、22~2時は体の細胞が修復される時間と考えられています。生理学的には、胃腸などの消化管は睡眠中に活発になることから、肝臓では代謝が進み、タンパク質の合成・分解が活発に行われています。血液をつくるためにも0時までには寝るのが理想です。
STEP3:血液を巡らせる
■日常生活の中に運動を
血流をよくする最後の要となるのは、筋肉。筋肉を動かすことで血流は促進されます。中でも下半身には全身の筋肉の半分以上が集まっているので、下半身を使った運動を行うのがポイントです。運動はしたいけど、毎日忙しいから時間をつくるのはなかなか難しい。そんな方に、川嶋先生からの提案です。
「日常生活の中でちょっと嫌なことをしてみましょう。例えば、電車では座らずに立つ。これだけでエネルギー消費量は20パーセントほど多くなります。エスカレーターではなく階段を使う、歩く時は大股早歩きに。また、いすに座る時は両膝をしっかりつけるようにすれば内転筋のトレーニングになります。運動をこう考えていけば、時間がないからできないとはなりませんよね」。
加齢と共に減りがちな筋肉をキープするためにも、運動はぜひ習慣化を。その他、次のようなことを心がけましょう。
【家事をしながら運動しよう】
洗濯物を干す時、1枚1枚干す度にスクワットをしてみてはいかがでしょう。10枚干せばスクワット10回、立派な運動になります。洗い物をしたり、歯磨きをしたりする時は爪先立ち。これで脚の筋肉が鍛えられます。日々の家事の中にゲーム感覚で運動を取り入れてみてください。
【腹式呼吸でリラックス】
ストレスや緊張の多い人は、自律神経の乱れから血流が悪くなっていることも。腹式呼吸は自ら自律神経を整えられる貴重な手段です。息を吸う時は鼻からで、お腹を膨らませるようにします。吐く時はお腹をへこませながら口から吐いていきます。吐く時間を、吸う時の倍にするのがポイント。
【ドライヤーでツボを刺激】
血流改善によいツボを1つ挙げるとするなら、女性の万能ツボとして知られている「三陰交(さんいんこう)」。手で押したりお灸をすえたりするのもよいですが、簡単で効果的なのがドライヤーを当てること。ツボに近づけて、熱いと思ったら離す。これを5回繰り返すとよいそうです。やけどの危険性があるので、必ず自分で行いましょう。
【前編も併せてお読みください→】夏バテの不調は「血流」に問題あり? 血流悪化を招く夏の三大要因とは?
<監修者>
監修/川嶋 朗先生(かわしま・あきら)
東京有明医療大学教授、東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門。北海道大学医学部卒業。ハーバード大学医学部留学を経て、現職に至る。西洋医学と代替・補完・伝統医療を統合した医療を目指す。日本抗加齢医学会評議員、日本統合医療学会理事。西洋医学では、腎臓病、膠原病、高血圧などが専門。