学校で厳しく教わった「書き順」。実は正しいものはない、と専門家が指摘します。現在2021年7月号が発売中の朝日新聞出版『みんなの漢字』から漢字うんちくを紹介。※監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)
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Q 「漢字」と呼ばれるのはなぜ?
A 漢の時代に領土の拡大などがあり、漢が中国王朝の代名詞となったから
「漢字」は漢の時代につくられたわけではありません。「漢の時代は領土が拡大し、約400年も続いたため、漢が中国を表す代名詞となったから漢字と呼ぶのでしょう」(久保さん、以下同)。現在も、中国国内で大多数を占めるのが「漢民族」で、言語は「漢語」と呼ばれ、「漢語」を表記するための文字が「漢字」です。
Q 漢字は全部でいくつあるの?
A 日本の漢和辞典では最大5万字強。活字のフォントは10万~15万字
漢字の数を辞典に載っている数と考えると、日本では『大漢和辞典』(大修館書店)が最大で、5万305字を収録しています。中国では『中華字海』という辞典に8万5568字が収録されています。印刷に用いる活字のフォントは、旧字なども含めて10万~15万字に及ぶともいわれています。
Q いちばん画数が多い漢字は何?
A 「テツ、テチ」と「セイ」
先の『大漢和辞典』では「龍」を四つ並べた「テツ、テチ」と「興」を四つ並べた「セイ」が、ともに64画で最も画数の多い漢字です。「タイト」と読む84画の字も存在が噂されていますが、「辞典に載っておらず、使われた記録もありません」。
辞典にはないものの、よく使われているのが、中国中央部の都市・西安の名物料理「ピャンピャン麺」の表記に使われる漢字で、57画です。
Q 「部首」の「首」って何?
A 「部」の中の代表が「部首」。「部」と「部首」は違う
漢和辞典を見ると、「水部」や「木部」のように「部」ごとに分かれています。では、「部首」とは何かというと、「首」は「トップ、代表」の意味なので、「部」の代表のことです。「水部」なら「水」、「木部」なら「木」です。「最近はあまり区別されませんが、正しくは『さんずい』や『したみず』は部首ではありません。『さんずい』は水部の中の偏の名称で、『したみず』は同じく水部の中の脚の名称です」